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18歳になったトゥエンさんは、同じ村でともに鍛冶の仕事をしていたディン・コン・タムさんと恋に落ちた。「彼は兄の友人で、兄が軍隊に入っているときによくうちに来て重労働を手伝ってくれていたんです。女の私が鍛冶の仕事をこなしているのを見て、いつの間にか好きになったみたい」とトゥエンさんは回想する。やがて2人の恋の炎は燃え上がり、トゥエンさんが19歳になると2人は結婚した。
茅葺き屋根と土壁の家の中で価値のあるものといえば、鍛冶用の作業着だけだった。トゥエンさんは夫から新しい種類の刃物の作り方を学び、夫婦は鍛冶の仕事で2人の子供を育て上げ、ニュエ川を望む2階建ての家を建てた。
2006年、夫のタムさんは転職し、妻のトゥエンさんが1人で工房を切り盛りすることになった。息子はしばらく父親の仕事を手伝っていたが、また別の仕事に転職した。
「ダーシー鍛冶屋村では1000世帯以上が鍛冶に従事しており、このうち13人が職人の称号を与えられています。トゥエンさんは今も鍛冶の仕事を続けている唯一の女性職人なんです」と、ダーシー工芸村協会副会長でハノイ市職人会支部長でもあるホアン・バン・フンさんは語る。
村の工房はどこも男性1人と女性1人がいる。男性が主な作業を担い、女性が刃物の成形を補助する。しかし、トゥエンさんの工房だけは、主な作業も補助も女性が担っており、トゥエンさんは刃金の切り出しから研ぎまで、通常は男性が手掛ける技術にも精通している。
トゥエンさんの工房の助手を務めているダン・ティ・カインさん(女性・40歳)は、夫の故郷であるこの村で20年間にわたり鍛冶の仕事に携わってきた。「私はただ作業をするだけで、刃物のことはさっぱりわからないんですよ。でも、トゥエンさんは一目でその刃物のサイズや厚さ、そしてミスしたところまですぐにわかるんです」とカインさん。