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ジエム監督とジーさんは、友人のようであり姉妹のようでもある。ジエム監督は、ジーさんが男性と一緒にお酒を飲んで仲良くすることを心配し、はたまた怒ったこともある。
ジーさんの母親も姉も「嫁さらい」で結婚した。ジーさんの父親が母親を「さらった」とき、母親には別の恋人がいた。しかし、恋人が「さらわれた」ことで、母親の恋人だった男性は自殺してしまった。
霧に覆われたその地と同じように、依然として風習が家族、階級、貧困に重くのしかかっている世界では、「妹」が選択の自由を持つことができないのではないかとジエム監督は心配していた。
結局のところ、ジーさんは母親や姉のように「嫁さらい」で結婚することはなかった。ジーさんは17歳のときに愛する人と結婚し、今では娘もいる。
ジエムさんの母親であるリエン・トーさんは、「娘に苦労させたい母親なんていません。だから、娘が大手の報道機関での安定した仕事を捨てるなんてと大反対しました」と語る。母子の間に緊張が走ることも多々あったが、トーさんが何を言ってもジエム監督はただ黙っていた。
親しい友人も反対し、ジエム監督にもっとやさしい道を選ぶようアドバイスした。「それでも、応援してくれる人もたくさんいたんです」とジエム監督は話す。親友が半年間も生活を支えてくれたり、先輩がカメラを貸してくれたりもした。
映画制作コースでジエム監督を指導したチャン・フオン・タオ監督も、ジエム監督が今後の成長の機会を逃してしまうのではないかと心配して「Children of the Mist」の制作に反対し、テレビの道に進んだほうがいいと勧めた。しかし、ジエム監督は「テレビの制作は私には合いません」と答えた。
しかし、「Children of the Mist」の制作が進む中で、タオ監督もジエム監督の粘り強さに気付き、クルーもその情熱に感動し、ジエム監督への信頼が育っていった。
4年間で膨大な時間の撮影をした。難しかったのは、モン族の言語の翻訳者を雇う資金を調達することだった。そこでジエム監督は、あちこちの基金に書類を出した。最初に支援を得ることができたのは、すでに作品がだいぶ形になった2019年のことだった。その後、他の多くの基金からも支援を得ることができた。
タオ監督は「映画が完成して、これは賞をもらえるなと思いました。まさにジエムらしい作品であり、彼女そのものだったからです」と語る。
ジエム監督にとって、最優秀監督賞の受賞はこれまでで最も大きな功績だ。ジエム監督は「受賞以来、支援の申請も楽になりました。きっとこれからの道は、いばらが減って、もっと情熱的なものになるでしょう」と語った。