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2021年11月にオランダの首都アムステルダムで開催された世界最大のドキュメンタリー映画祭「アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭2021(IDFA 2021)」の国際コンペティション部門で、ベトナムのドキュメンタリー映画「Children of the Mist(原題:Nhung Dua Tre Trong Suong)」を手掛けたハー・レ・ジエム(Ha Le Diem)監督(30歳)が最優秀監督賞を受賞した。同部門の最優秀監督賞は、最優秀作品賞に次ぐ大賞だ。
最優秀監督賞の受賞者として名前を呼ばれたとき、一番後ろの席に座っていたジエム監督は、一斉に自分に向けられた視線に驚いた。そして、会場の大画面に自分の作品が映し出され、驚愕した。心の準備ができていなかった。
名前が呼ばれる前、ジエム監督は主催者が自分の席を最前列にした意図など知らず、知り合ったばかりの2人の監督と一緒に最前列から一番後ろの席にこっそり移動していたのだった。
授賞式では、周りのほとんどの人たちがめかしこんでいる中、ジエム監督はカジュアルなデニムジャケットを羽織っていた。ステージに上がったジエム監督は、4年間の月日を費やしてきた作品によって授賞式のステージに立つ機会を与えてくれた映画祭に感謝の言葉を述べた。
ジエム監督は東北部地方バクカン省で生まれ育った、少数民族のタイ(Tay)族だ。幼いころから元小学校教員だった父方の祖父の影響でたくさんの本を読んで育った。しばしば友人たちが彼女のもとに集まり、彼女が読む物語に耳を傾けた。
語り手への好奇心はジエム監督の中に深く染み入り、高校を卒業するとき、あちこちへ行けてたくさんの興味深い体験ができて、そしてそれを多くの人に伝えることができると考え、メディアの道を選んだ。しかし、高校を卒業して報道機関やテレビ局で働きながら、口数が少なく内向的な自分の性格とこの仕事は合っていないと感じるようになっていた。
そして、2012年と2016年に2つの映画制作コースを受講したジエム監督は、インディペンデントのドキュメンタリー映画制作の道に進むことを決めた。
これは勇気のいる決断だった。インディペンデント映画を手掛けるには、未来が全く見えない中で、自分でテーマを見つけ、自分で資金を調達し、自分で協力者を探さなければならないからだ。その代わり、自分の心に従って自由に制作することができる。