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ハノイ市在住のダオ・バン・フックさん(男性・42歳)は、シリコン製の義指のしわを直し、実際の肌の色と見比べてから顧客の手に装着した。
ハノイ市ホアンマイ区タンマイ(Tan Mai)通りにある広さ40m2のアパートの一室で、注文客は5本指が揃った手を上げ、満足げに微笑んだ。そして、色を見ただけでは本人でさえどの指が義指か判別するのが難しいと認めた。
「本物そっくりの義指を作るのも難しいのですが、お客さんの手にフィットさせるのはもっと難しいんです」と、フックさんの同僚である東北部地方クアンニン省出身のチャン・フイ・ヒエップさん(男性・32歳)は語る。
ヒエップさんは以前、ハノイ市のとある病院で臨床検査技士として働いていた。今から6年前、身体の一部を失った患者たちが、人付き合いでコンプレックスを感じると話しているのをたまたま耳にしたヒエップさんは、本物そっくりのシリコン製の義手や義足、義耳、義鼻などを製作して、彼らの助けになれないだろうかと思いついた。それだけでなく、製品の見た目や品質を良くし、価格も海外製品より安く抑えたいと考えた。
思い立ったが吉日、ヒエップさんは仕事を辞め、補装具製造について学び始めることにした。フックさんがシリコン型製造に特化した工場を持っていることを知ったヒエップさんは、フックさんに共同事業を提案した。そして2017年に2人は事業を開始した。
起業してすぐ、ベトナムにはこの分野の専門的な訓練施設がないことを知り、2人は海外の本や動画を通して自ら補装具について学んでいった。「何百回も失敗してようやく完璧で満足のいく製品を作り上げることができます」とフックさん。
2年間の研究の末、2人は各補装具の最初のサンプルを作成し、時間をかけて製品を完成させた。特に掌紋や指紋、元の肌の細かな部分まで再現するため、各工程の8割を手作業で行っており、見た人は補装具だと気付かないほどの仕上がりになっている。