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カムスエン郡在住のファム・バン・タンさん(男性・78歳)によると、最近は「クジラが漁師を助けた」という話は聞かないものの、数十年前にはある出来事が起きたという。
数十年前、カムニュオン村の「トゥー」という名の漁師が海に出た際に大きな波と強風に遭遇し、乗組員たちに「これじゃ生き残れないだろう」と告げた。しかし、数秒後に大きなクジラが現れ、トゥーさんと乗組員たちが乗った漁船を、安全な小さな島まで連れて行ってくれたということだった。
「鯨寺」の管理委員長であるフオンさんは、クジラ崇拝の風習は迷信ではなく、漁村に暮らす漁師にとって、海の上でいつもそばにいてくれる友人であるクジラに対する信仰なのだと語る。
しかし、フオンさんには懸念していることもある。以前は、クジラが殺されるケースはほとんどなかったが、最近ではその数が増えているためだ。フオンさんたちは直近3年間に32頭のクジラを埋葬したが、死因は海洋環境が電気ショック漁や引き網漁の影響を受け、その影響がクジラに及んだ可能性があるという。
また、時代の移り変わりとともに、ドゥックグーオン廟も老朽化が進み、4年前に当局と地元住民の協力で再建された。フオンさんは近い将来、当局の資金援助を得て大きなクジラの石碑を作り、祈る場所を広くとるため古くなった墓を建て替えたいと考えている。
カムニュオン村人民委員会のグエン・バン・フン主席によると、ドゥックグーオン廟でのクジラ信仰の風習は、地元住民にとって無形の文化的生活であり、毎年陰暦4月8日に行われるカウグーニュオンバン(Cau ngu Nhuong Ban)祭りとチェオカン(Cheo can)祭りにもつながっている。カウグーニュオンバン祭りは、文化スポーツ観光省から国家無形文化遺産に認定されている。
「毎年、当局は廟の運営費を拠出しており、多い年で約10億VND(約500万円)を充てています」とフン主席は語った。
なお、ベトナムでは、ハティン省のほかに北中部地方ゲアン省、南中部沿岸地方ダナン市などでもクジラが海岸に打ち上げられることがある。いずれのケースでも漁師は死骸を引き上げ、埋葬して供養している。