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「息子夫婦だけでなく、私たち家族全員にとっても辛い時期でした。幸い、2人は困難に立ち向かう強さを持っていました」とチエンさんの父親のフウさんは当時を回想する。ニャット・アンくんの入院中、フウさんがダクラク省から、ランさんの母親がニントゥアン省からホーチミン市に駆けつけ、子供たちをサポートした。
数か月間におよぶ入院を経て、ニャット・アンくんの病状はようやく安定し、両親の元に帰ることができた。生後10か月を迎えるころには少しずつ歩き始め、言葉も出るようになってきた。息子がよちよちと歩くのを見るたびに、チエンさんは「両親が小さい分、この子はきっと強い子だ」と心の中で思っている。
子供の病気だけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も夫婦の生活を大きく混乱させた。大黒柱であるにも関わらず、チエンさんは7月から失業中で、ホーチミン市の社会的隔離措置の適用中は地域のサポートや国の補助金に頼って生活するしかなかった。
「困難は私たちを成長させてくれるものでもありました。以前よりも、自分たち自身や子供に対して、より責任を持って生活するようになりました」とランさんは語る。
ホーチミン市の社会的隔離措置が解除され、10月の初めにチエンさんとランさんは子供を連れてダクラク省の田舎に帰った。2人は、まず結婚届を提出して、合法的な夫婦になることを考えていたのだった。
10月28日、チエンさんとランさんはクロンブック村人民委員会に行き、結婚手続きを行った。小さな夫婦の訪問に多くの職員が驚き、心を打たれた。同村人民委員会のグエン・ハイ・サム主席は、10年以上この仕事を続けてきた中で、このような特別な結婚証明書を公布したことはない、と話した。「2人の愛は日常の中にあるおとぎ話のようです。村の青年団の代表と話し合い、近々2人を祝福し、応援するための会を開く予定です」とサム主席は語る。
チエンさんは、外に出れば多くの浮き沈みはあるものの、妻と子供がいる家に帰ると安心するのだと教えてくれた。
「今の生活は、これまで夢にも思わなかったプライスレスな贈り物です。私の小さな家族が、人生の大波や強風を乗り越え、健康に生きていけることだけをただ望んでいます」。チエンさんはそう言い、両腕を小さな輪にして妻と子供を抱きしめた。