(C) vnexpress |
午前5時、勤務時間を終えたハウさんは、女性がカントー橋から立ち去るのを見送ると、ようやく安心してバイクで帰路についた。これは、ハウさんが救ってきた数十人の飛び降り未遂の一事例だ。
カントー橋の安全秩序警備隊には約50人が所属し、主に橋の警備、事故発生時の交通整理サポートなどを担っている。自殺しようとしている人を思い止まらせ、話を聞いて救助する仕事は本来の任務外ではあるが、皆「死ぬところを目の当たりにして救わないわけにはいかない」という良心から引き受けている。
今回の救助案件には時間を要したものの、ハウさんは昨年出くわしたケースのように傷を負わずに済んだ。
昨年のある夜、ハウさんはパトロール中に1組の男女のカップルが揉めているのを目撃した。女性が欄干を登って橋の外側に行き、飛び降りようとするところを恋人が引き止めていた。ハウさんもすぐに女性の両手を掴むと同時に、通行人に警備員室まで行って同僚を呼んで来て欲しいと伝えた。
女性の手を掴んでいる間にハウさんは痛みを感じた。ふと見ると、女性がハウさんの手を噛み、血が出ていた。「とても痛かったですが、手を離せば女性が飛び降りてしまうので、離すことはできませんでした」とハウさんは振り返る。
その間にハウさんの同僚も駆けつけ、野次馬が集まって渋滞が起きないように交通整理を行い、警察に通報して応援を要請した。ハウさんの必死の救助が続き、1時間以上経ってようやく女性は警察に手錠を掛けられ、そのまま病院に連れて行かれた。
カントー橋メンテナンスチームの副隊長を3年以上務めているビンロン省出身のファム・タン・タインさん(男性・42歳)は、2年前にある青年を救助できなかった辛い経験から、迅速な行動を取るようになった。タインさんは欄干の外側にいる人が飛び降りようとしているのを見つけると、ためらうことなく近づいてしっかりと手を掴んでから語りかけ、橋の内側に引き寄せるようにしている。
「1秒でも遅れれば救助が間に合わないこともあります」とタインさん。2年前、タインさんは飛び降りようとしていた青年を説得した後、青年が欄干の内側に戻って来たためもう大丈夫だと思い、手を離してしまった。しかしその一瞬の隙に、青年は再び欄干を登り、川に落ちていったのだ。