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今回のチャビン省での公演には、道具も団員も一緒に1台のトラックで行く。道具が荷台のほとんどを占めてしまうため、10人以上の団員たちは空いたスペースにぎゅうぎゅうになって座らなければならない。狭い車内で、カントー市からチャビン省まで2時間の移動だ。
年上の男子団員たちは、女子団員やチュック・アンさんのような年少の団員たちが仮眠を取れるよう、間の場所を譲って座らせる。まだ薄暗い午前5時に出発したトラックが80km余りの道のりを経てチャビン省カンロン町に到着するころには、すでに外も明るくなっていた。
目的地に到着したときの団員たちはあくびをし、眠そうな様子だったが、誰からともなくてきぱきと動き出し、道具をトラックから降ろして、客の指示に従いすべての道具を所定の場所に配置していった。
そして、道具の準備に加え、麒麟ダンス、ドラゴンダンス、太鼓、財の神様、土地の神様の各役の団員たちも衣装に着替えて準備が整った。オープニングセレモニーなどの客のプログラムによっては1~2時間待ちということもある。しかし、その間も自分のポジションを離れてはいけないというのが演舞団のルールだ。
炎天下で2時間近く待っていると、皆汗だくになり、衣装も濡れてしまっていた。それでも、演舞に向けて気持ちは盛り上がっている。チュック・アンさんは年少のため、公演で遠方に行くことはめったにない。この日は久々の出張公演で、チュック・アンさんや他の年少メンバーたちは、緊張しておとなしく座っていることができないでいた。5~10分ごとに、演舞が何時に始まるのかとリーダーにたずねた。
女子演舞団のおかげでパンデミックを乗り越える
トゥーアインドゥオン演舞団は、女子団員が所属するベトナムでもめずらしいムアラン演舞団の1つで、2008年にルオン・アン・ドゥオンさんが設立した。女子団員は13~18歳の16人だ。
当初、ドゥオンさんが女子団員を養成しようとしたとき、同業者からでさえもなかなか支持を得ることができなかった。「皆、タフで健康な若い男性こそ、『伝説の動物』の演舞をし、コンテストや重要なイベントに参加する資格がある、と言いました」とドゥオンさん。
しかし、思い立ったら行動するドゥオンさんは、団員候補の女子生徒を集め始めた。当初は1~2人しかいなかったが、1人が別の人に、また1人が別の人に声をかけていき、女子生徒は徐々に増えていった。ドゥオンさんは「男性には男性の強みが、女性には女性の強みがあります。そして、絶対にムアランは男性だけのものではないんです」と語る。