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―――MV撮影の裏話を教えてください。
井手:外で撮影をしていると、周りにいるベトナム人が興味を持って話しかけてくれるんですが、カメラが回っているときにも普通に話しかけてくるのでそのたびにやり直しになります。道が渡れないという僕のシーンの時なども、何人かのベトナム人が「今なら行けるよ!」とか、「こうやって渡るんだよ!」と僕の手を引っ張って一緒に渡ってくれたんですが、それで撮り直しになったりもしました。あと、シンスケ1人のシーンの時に、僕にマッサージの勧誘をしてきた人もいました。疲れて見えたんでしょう。やっぱり優しい人が多いんだなと感じました…。
中川:これは本当に秘話なんですが、実は、曲と詞の声調があまり合っていないところもあるんです。日本人は聴いてもわからないと思いますが、ベトナム人にはここがわかりにくい、あそこがわかりにくい、と言われます。ただ僕らも現地に4年住んでいるので、そこはわかっています。でも、レコーディングをしてくれた若いベトナム人クリエーターがオッケーを出してくれたんです。「この歌い方で大丈夫?」と聞くと、「大丈夫、大丈夫」と。中国語も声調がある言語ですが、今の中国のポップスも声調を意識せずに歌ったりしているようで、感度の高い、若いベトナム人のクリエーターを信じて、僕らもそちらに流れていこうと思いました。
―――ベトナムにいて、ご自身が「現地人になった」と最も感じるときはどんなときですか?
中川:路線バスに乗ったりもするのですが、乗る直前にバスに向かって思いきり両手を振ってアピールすることですかね。そこまでしないと停まってくれないので、そうすることには慣れました(※ベトナムの路線バスは乗る時に手を振って停める)。
井手:虫が出ようが、ゴキブリが出ようが、ネズミが出ようが全く気にしなくなったことでしょうか。今、1匹のゲッコー(ヤモリ)が部屋に住み着いていて、毎晩テュッテュッテュッテュッと鳴いています。この子が赤ちゃんの頃から家にいるのでもはや愛着が沸いています。壁に付いた糞を掃除しているときに少し腹が立ちますが…。
―――MVで「マムトムにはまだ慣れない」というネタがありますが、ほかに今でも慣れないことはありますか?
中川:空港などで、列に並ぶ時の距離の近さですね。ベトナム人のパーソナルスペースが狭いからなのか、触れているか触れていないかのギリギリの距離感。腕は触れていない、でも腕毛は触れている、という。あれには未だに慣れません。
井手:夜の犬ですね…。しばらく一定の距離を保ちながらついてくるので、いつ飛び掛かってくるかとビクビクしながら歩いています。