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このとき、幸運にも通りすがりの運転手たちが倒れていたチエンくんを発見し、飲み物と食べ物を与えて父親に連絡をして、自転車とともにチエンくんをハノイ市まで送り届けたのだった。その後、周りの人たちはチエンくんが自転車で走った道のりを計算してみると、驚いたことにその距離はおよそ103kmにも及んでいた。
チエンくんは3月26日の朝に弟を見舞い、病院で昼食をとってから、学校へ行くためまたソンラ省に戻った。帰りは自動車で父親との二人旅。帰りの2人分の運賃は中央小児病院に勤める弟の主治医の医師が出してくれた。
この医師はまた、チエンくんに新しいサンダルを買うためのお金も渡した。チエンくんが履いていたサンダルは、103kmもの道のりを共にし、さらに自転車のブレーキ役という「任務」をまっとうしてぼろぼろになっていた。
チエンくんはベトナム現地紙「トゥオイチェ―」のインタビューに対し、「道のりは遠いし暑いし大変でしたが、弟や両親のことを思って自転車を漕ぎました。食べ物も飲み物もありませんでしたが、弟が恋しくて、空腹も喉の渇きも感じませんでした」と語った。
「弟に会えて幸せです。早く病気が治って家に帰ってきて、一緒に牛の散歩に行きたいです」とチエンくんは涙ながらに続けた。
チエンくんの祖父は「今でもまだ身震いします。幸いチエンは無事に両親のもとに戻りましたが、もし行方不明になっていたら、どうやって探せばいいのか見当もつきません。身分証もなければ携帯電話もなく、薄着で、帽子もなくて…」と涙した。