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―――なぜベトナム映画の題材として「パパとムスメの7日間」を選ばれたのでしょうか。
やっぱり韓国人の親友が韓国版をやった、というのもきっかけとしてあります。それと、ベトナムと日本の一番の共通点の1つというのが家族の大切さなんじゃないかなと思っていて。特にベトナムでは、言葉遣いなど、子供は親に敬意を表さなければいけないという考え方が根強くあります。他に日本と違う部分というと、家族が多いことですよね。1つの家庭に、場合によっては10人くらいの家族が一緒に住んでいる。だからこそ家族のつながりが強いんですけれど、今回のパパムス(パパとムスメの7日間)ではあえて日本のように核家族的な感じの環境にしました。
パパとムスメとママの3人の、三脚のような支え方をしている関係の中で、ママが死んでしまったらどうなるのか、母親が死んでしまって三脚が崩れたときに2人はどうやって支え合っていくのか、というのが今回の映画のテーマでもあると思うんですけれど、そこは原作とは大きく違う部分です。(原作の)五十嵐貴久先生と少しずつ話をしながら、一番大切なことはパパとムスメが愛し合っているけれども分かり合えないという部分で、その部分をどうやって表現するか、あとは任せるとおっしゃっていただいて。それで(ママの死という)大きな変更をさせていただきました。
―――映画化にあたり、原作者の五十嵐貴久先生とはどのようなお話をされましたか。
正直、ベトナムで映画化するというのはベトナムの観客に合わせた作品作りをしなければいけないということで、大きな変更を余儀なくされるという意味ですごく心配はしていました。ただ、五十嵐先生は作品作りに理解を持ってくださっていて、この作品がベトナムの観客に伝わるにはどうしたら良いのかというアドバイスもしていただきました。あとは、サイゴン・ボディガードもご覧になった上で、こういうコメディの感覚を活かしつつ、根幹となるパパとムスメの愛情をしっかりと紡いでいってください、とうかがいましたね。
今回、大きな変更点がママの死ですよね。母親の死をどのように2人が受け止めるのかというのが僕はこの映画のテーマのうちの1つだと思うんです。今回の場合は、パパは奥さんが先に逝ってしまったことに対して、「人生は短い。ならば瞬間瞬間を楽しんでいこう」という考え方、価値観に変わっていきます。ムスメのほうは逆に「人生は短い。だからこそ最大限の努力をして、常にベストを尽くしていこう」という考え方になった。母親の死をきっかけに価値観が真っ二つに分かれてしまった2人の関係を、どうやって追っていくことができるのか。どちらも大切な価値観なんですけれども、どちらか一方だけではやっぱりどうしても社会適合性に欠ける部分はあって、その価値観をどうやって2人が理解し合っていくのか、というのがずっと映画の根底に流れるテーマなんじゃないかなと思います。その部分に五十嵐先生も共感してくださって、そういう形でいくのであればぜひ進めて欲しい、とおっしゃってくださいました。
―――プレミアで五十嵐先生が映画をご覧になるというとき、どのようなお気持ちでしたか。
すごく緊張しました(笑)。ただ、五十嵐先生が大切にされていた根っこの部分は僕も大切にしていたという自信はあったので、あとは実際に作品として面白いと思っていただけるかというだけでした。(五十嵐先生に)「この作品は自分の作品じゃない」と思われるようなことはしていないという自信はありました。