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ホーチミン市フーニュアン区児童館の3階では障がい者向けに無料の合気道教室が開かれている。教室に通じる階段には、母親に見守られながら伝い歩きで一歩ずつゆっくりと階段をあがる少年の姿がある。少年の名前はホアン・ティエンくん(9歳)、脳性麻痺で2年前まで寝たきりだったが、この教室に通うようになってからハイハイ、掴まり立ち、自立ができるようになった。
「2か月ほど前に伝い歩きができるようになったばかりなんですよ。それまではどこへ行くのもこの子を背負っていかなければなりませんでした」と母親のトゥエンさん(28歳)。2009年に誕生したティエンくんは大人しく手のかからない子だった。
ところが、生後18か月になってもハイハイも一人座りも掴まり立ちもしなかった。ティエンくんを病院へ連れて行くと、脳性麻痺で両足の筋力も弱いと診断された。「病院からの帰り道、バイクの後部座席に妻と息子を乗せて走りましたが、息子が可哀そうで涙が止まりませんでした」とティエンくんの父親のトゥンさんは回想する。
ティエンくんの治療に専念するため、トゥエンさんは在籍していた師範大学を2年生で休学した。トゥンさんは製氷店で働いていていたものの給料は少なく、夫妻は家財を売ってティエンくんの治療費に充てた。病院、民間療法、理学療法、指圧、障がい児向けのリハビリ教室などあらゆる方法を試したが、どれも効果がみられなかった。
そうしている間にティエンくんは7歳になったが、赤ん坊のように寝たままで知らない人を見ると恐がって泣いた。身体も弱く天気の変化で体調を壊しては1か月ほど長引いた。そんなときにはトゥエンさん夫妻は自らのIDカードを担保にお金を借入れた。
2016年初め、トゥエンさんはティエンくんに合った習い事はないかと児童館へ連れて行った。その日はたまたま合気道家レ・ホアン・マイ氏の子供向け合気道教室が開かれていた。息子を背負い暗い顔で階段を昇るトゥエンさんを見てマイ氏は声を掛けた。事情を知ったマイ氏はティエンくんに無料で稽古をつけることにした。
ティエンくんは週4回、教室で四足歩行、手すりや壁を使った伝い歩きを練習し手足の筋力をつけ、精神の集中を学んでいる。教室ではマッサージや指圧、整骨などの治療も受けている。