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「家にいる奥さんのことは気にならないのですか?」という質問に対して、彼は穏やかに答えた。「心配事はいくつもあるよ。もし自分が旅に出ている間に妻に何かあっても、家に戻るまでに1~2日はかかってしまう。だから自分はいつも冷静でいないといけないと思っている。でも妻は自分のことを相当愛してくれているからか、自分が遠方に出ている間も元気で帰りを待ってくれているよ」。
彼は粗食で、1日にごはん1杯ほどを食べるだけで平均200~250kmを走る。小さなポケットがたくさんついたよれよれのウィンドブレーカーにカメラとビデオカメラ。「これが常に身につけているもので、自分の身元証明のようなもの」という。何度も修理した跡の残るゴムサンダルに、宝物のスーパーカブ50。バイクの前には三脚と雨具の入った2つの袋、ハンドルには時計と小さな方位磁石。そしてバイクの後ろには、レインコートに包まれた衣類やノート、毛布、救急セットなどがくくりつけられている。
「息子が自分の希望通りにバイクを修理してくれた。燃費も良いしよく言うことを聞いてくれて、めったに主人を裏切らない。時々はトラックやバスに助けを求めないといけないこともあるけどね」。86歳という年齢でツーリングに夢中になる理由について、彼はゆっくりとこう語った。「困難も転ぶことも誰にも知られずに野垂れ死ぬことも怖くない。向こう見ずな性格なんだ。好きだから行く、それだけだよ」。