(C) thanhnien 写真の拡大 |
(C) thanhnien 写真の拡大 |
「こいつはホーチミン市まで一緒に帰る奴。隣は自分をインタビューしに来た新聞記者だ」。ホンダのスーパーカブ50にまたがった86歳のスーパー老人は、そう言いながらビデオカメラを回した。このスーパー老人―ファム・バン・ゴックさんは、ホーチミン市から1700kmに及ぶ鉄道での長旅を終えてハノイ市のハノイ駅に降り立ったばかりだった。ここからホーチミン市までバイクで帰る。彼は足を止めて、帰って妻に見せるためにビデオを撮っていた。
ここ16年間のツーリング生活で、ゴックさんは映像や写真を撮っては帰って妻に見せている。「私は86歳、妻は84歳、連れ添って61年、子供は11人」。いまだ「お前」「あなた」と呼び合う仲だという。「自分はこうして旅にばかり出ていて、それを良しとしてくれる人なんて誰もいない。妻もそうだ。分かってもらうには妻にお世辞の1つでも言わないといけないだろうよ」。彼はそう言って笑う。
若者たちがこうした旅を「ツーリング」と呼ぶようになったのは2000年代の初め頃だった。初めて行った場所ははっきりとは覚えていない。「あちこちに行くのが好きで、家族もそうだった。生まれはダナン(南中部沿岸地方ダナン市)だが、父はかつて数百km歩いてフエ(北中部地方トゥアティエン・フエ省)の親戚を訪ねたこともある。自分も、仕事が忙しくても時間を作っては自転車で南部やメコンデルタ地方を訪ねて回ったもんだ」と語る。