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―――撮影で大変なことは。
やはり言語の違いがあるので、通訳に時間がかかったり、勘違いが起きたりしますね。僕も相手も英語が母国語ではないので、第2言語として話していて、すれ違いがよく起きます。その小さな積み重ねが時間のロスに繋がります。
ただ、もちろん日本で撮影していても多少のニュアンスの違いはあります。日本だと「それは難しいですね」と言うと、「難しいけどできる」のか「難しいのでできない」のか、空気を読まないといけない。米国では「イエス」と「ノー」がはっきりしています。ベトナムでは「できる、できる」「大丈夫、大丈夫」と言いつつ、実際はできていないこともあります。
それから、今回の作品はサイゴン川の水上での撮影もあって、それ以外にもカーチェイスあり、アクションあり、コメディーあり、ヒューマンドラマありなので、大変な部分もありました。
―――ベトナム人キャストの方々の印象や現場の雰囲気はいかがですか。
和気あいあいとした現場だと思います。やはりアクションコメディー映画を作っているだけに、現場の雰囲気が映画の楽しさにも繋がってくると思います。ですが、他の国と比べて声のボリュームがすごく大きい国なんじゃないかな。ベトナムでは皆が皆、大声で怒鳴っているかのように話し合っていて、そういう意味では、すごくにぎやかな現場ですね。
キャストの印象。特にタイ・ホア(Thai Hoa)さんは本当に素晴らしい役者さんです。カメラが回った時の存在感など、やはり普通の人とは違うオーラが出ている。彼を見ているだけで楽しくなります。それが何なのかというのは、スター性という言葉でしか表現できないかもしれません。色々なテイクで色々なギャグを混ぜたり、アドリブをどんどん入れたりするので、何回も何回もただ見ていたい。そんな役者さんはなかなかいません。
ベー・チャン(B Tran)さんも、素晴らしい演技をしています。今回はボディガードの話で、ある大企業の息子が誘拐されて、そっくりさんをすり替えるんです。それで、すり替えている間に本物のクライアントを探す、というコメディーでもある。彼は地方からやって来たフォー売りと大企業の息子の2役を演じています。2つの裏表の役を演じる中で、すごく繊細な演技をするので、これからどんどん伸びてくるのではないかと思っています。
―――ベトナムでの公開は12月とのことですが、日本での公開予定は。
日本でも単館などで公開しないかという話は出ています。ただ、ベトナム映画が日本で公開されるというのはほぼ前例がないので、単館が精一杯かなとも思います。最近はインディペンデント映画自体、日本の映画館でなかなか公開されないこともありますしね。
この映画のメインの目的は、ベトナムで、ベトナム語で、ベトナムの観客に楽しんでもらうことですが、可能であれば、ベトナムのコンテンツとしてこの作品を北米や日本などにも進出させていきたいと思っています。
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落合賢監督プロフィール
落合賢(おちあい・けん)
1983年生まれ。東京都出身。高校卒業後に渡米し、南カリフォルニア大学で映画製作を学んだ。大学卒業後は、アメリカ映画協会付属大学院(AFI)映画監督科で修士号を取得。
短編と長編合わせて30本以上の作品を国内外で監督し、ショートショートフィルムフェスティバルで東京都知事賞(「ハーフケニス」2009年)及び国土交通大臣賞(「井の中の蛙」2010年)、ローマ国際映画祭最優秀国際短編映画賞(「ハーフケニス」2009年)など数々の賞を受賞。2013年には、ウエンツ瑛士主演の「タイガーマスク」が公開。2014年公開の「太秦ライムライト」は、米国など世界中で広く上映され、大きな注目を集めた。