(C) Tuoi Tre, サイトウ・タカシさん 写真の拡大 |
この1か月ほど、ダナン市のハン川に架かる橋の近くの交差点で、眼鏡をかけた白髪の男性が通り過ぎる車両台数を数えて写真を撮り、メモをしている姿を見かける。雨の日も日差しの強い日も、彼は早朝4時からここに立ち、夜8時半にいなくなる。埼玉県浦和市からやってきたサイトウ・タカシさん(69歳)だ。
サイトウさんは、交通に関するトップクラスの専門家。定年退職した後、ベトナムで交通事故削減に取り組んでいる。1日の睡眠時間はたった4時間。1日の多くを交差点で過ごし、それ以外の時間は、パソコンにデータを入力し、研究・分析している。
正午近く、木陰が一つもない道路で、彼は古いノンラー(円錐状の葉傘)をかぶって、チャンフー通りとレズアン通りの交差点に立つ。メモ帳とカメラ、計数器を持ち、時折体を折り曲げて熱心にメモしている。昼食に通りがかりの行商からパンを買い、水であわただしく流し込んで、観察を続ける。定年退職してからの9年間を、ハノイ市からダナン市までベトナムを移動しながら、交通について研究してきた。
彼の立つチャンフー通りとレズアン通りの交差点は、昨年4月に始動した国際協力機構(JICA)の技術協力案件「ダナン市都市交通改善プロジェクト」の対象地点となっている。このプロジェクトは、都市開発方針に沿った都市交通システムを計画・実施・評価・管理するダナン市交通局の能力を強化すると共に、都市交通システムの改善によりダナン市の持続的発展を促進する目的で実施されている。
具体的には、交通観察をベースに適切な方策を割り出し、カメラを設置して、交通量に合わせて自動的に道路標識を変更させるシステムを構築していく。最適なシステムを構築するには、地道に交通状況を観察する以外に方法はない。