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ベトナムの「子供の日」でもある旧暦8月15日の中秋節が近付くと、ハノイ市タインオアイ郡カオビエン村ダンビエン村落では毎年、1人の伝統工芸家が一心不乱に灯籠を制作している。彼の名は、ブー・バン・シンさん。
彼の作品の中で最も際立っているのは、通常のサイズの数十倍にもなる巨大回転灯籠。シンさんは、2006年にベトナムギネスに認定された巨大灯籠を制作した工芸家としてよく知られている。回転灯籠は、内部にセットしたロウソクの炎で空気を暖め、これによって生じた上昇気流を利用して装飾の軸を回転させて、外部に影絵を映し出すという中秋節に欠かせない子供のおもちゃだ。
半生を過ぎた今、シンさんは自分がいくつの頃から灯籠を制作し始めたのか、もはや思い出せないという。ただ1つ覚えているのは、とある8月、真ん丸に輝いた満月の下で手にした自作の灯籠の明かりが揺らめいている光景だけだ。
2006年の中秋節、シンさんと同村落に住む工芸家たちは、高さ6.5m、幅2.56mの巨大灯籠を制作した。この巨大灯籠は市内にある児童文化宮殿に展示され、ベトナム最大の灯籠としてベトナムギネスに認定された。それ以来、中秋節の灯籠を制作する数少ない伝統工芸家と言えば、誰もがシンさんを思い浮かべるようになった。
シンさんは灯籠という伝統工芸を心から愛し、より美しい作品、より便利な作品を制作するためには努力を惜しまない。灯籠は、火を点したロウソクを正しい位置にセットして初めて軸が回転し、美しい影絵が映し出される。しかし子供がロウソクを上手にセットするのはなかなか難しいため、シンさんはロウソクの代わりに乾電池で軸が回転する灯籠を生み出した。これにより、小さな子供でも灯籠の美しさを手軽に楽しめるようになった。