(C)Thanh nien、ボックさん(右)と夫 写真の拡大 |
農園の話はここから。ボックさんは元々畑仕事に興味があったが、サイゴン時代には適わなかった。米国に渡ってすぐに小さな土地を手に入れて野菜を植えたが、この国の法律では農園を経営するには約8000m2以上の土地が必要と規定されている。
夫妻は広い土地を探していたが、1980年になって偶然現在の農園のある場所を通りかかって「売家」の看板を見つけた。交渉の結果、20万USD(約2030万円)という破格の安値で入手することができた。
当時は土地が荒れ放題で、今の姿にまで開墾するのに多くの労力と時間がかかった。土地を高価で買いたいと持ちかけてくる人は多いが、売るつもりは全くない。ボックさんは夫妻の終の棲家にしたいと考えている。
農園に植えられているのは柿やザボンといった果物のほか、カボチャ、ウリ、ズッキーニ、空心菜、クレソン、キャベツ、コールラビ、ツルムラサキなどの野菜、バジルやドクダミ、セージといったハーブ類で、購入客は主に近場に住むベトナム人だ。
長期契約を結びたいというスーパーもあるが、ボックさんは断っている。昔ながらの対面販売が好きなことや、ベトナム料理店や顧客に販売するだけで売り切れてしまうためだ。彼女にとって畑仕事をしている時間は、故郷で働いている感じがするという。「どうしても畑仕事がしたいのはそれが理由かな」。そう言ってはにかんだように笑った。