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街が眠りに沈む頃、暖かい家庭で夫や子供達に囲まれることなく、力仕事に精を出す女性達がいる。ハノイ最大の食品卸売市場であるロンビエン市場で真夜中にリヤカーを引く女性達で、近隣地方の貧しい家庭の主婦がほとんどだ。
真冬の深夜、ハノイの通りには人影が見当たらないが、ロンビエン橋のたもとにある市場は午前0時でも賑やかだ。荷を積んだトラック、バイク、自転車が次々と到着すると、数百人の女性達が争うようにリヤカーに荷を積み替えて運んで行く。仕事は夜10時から翌朝の夜明け頃まで続く。
紅河デルタ地方ナムディン省スアンチュオン郡出身のホアさん(48歳)は、500キロ以上のマンゴーを積んだリヤカーを引いていた。ホアさんはこの10年余り、雨が降ろうが熱帯夜だろうが毎晩市場に出ている。最初に300万ドン(約1万4600円)で買ったリヤカーはすっかり錆び付いている。
ホアさんはざらざらになった手の平を見せながら、「荷が重ければ重いほどお金になる仕事です。始めたばかりの頃は、手足がむくんで目も開けられないほど疲れましたが、そのうちに慣れました」と話す。きつい労働でも1回の運搬で稼げるのはわずか3万ドン(約146円)ほどで、1晩でも20万~30万ドン(約976~1460円)にしかならない。