(C)Bao Dat Viet, フンさんの制作した西洋風棺桶 |
彼らは、棺桶を作る以外の時間を、顧客となりそうな人を訪問する時間に充てている。とにかく顔を売ることが重要で、重役公務員の部下たちの信頼を得ておけば、上司が「商品」を必要とする時が来れば、紹介してもらえるという算段だ。
これまで一番大変だったのは、ある地方役人の家族のための棺桶を作った時のことだという。フンさんがたまたま友人を見舞うために病院を訪れた時のこと、VIPルームが目に入った。聞くと、ある地方役人の年老いた父親がそこに入院しているという。彼は直ちに弟を呼び、その役人について調べさせた。
役人に接触するまでが大変だった。色々な人に会って「コーヒー代」を渡したが、その総額は5000万ドン(約23万5000円)にも及んだという。ようやく目当ての役人に会うことができ、3回接触し、1割引の要求を呑んで、ようやく契約にこぎつけた。だが、そこからがまた大変だった。「ラオスヒノキを使い、緻密な彫刻を施し、金メッキなどを使った成金趣味ではなく、ステイタスを表すような芸術性の高い棺桶」という極めて難しいオーダーだったのだ。
そこでフンさんは腕のいい人の職人を5人呼び寄せ、北中部ゲアン省から木材を取り寄せた。昼も夜も作り続け、丸2週間かけて完成したという。その棺桶の件が終わっても、フンさんは引き続きその役人とコンタクトを取り続けた。役人には必ず役人の友達がたくさんいる。こうやって、「商品」が必要な時に紹介されるようになり、中央から地方までの役人の繋がりを網羅できるようになったのだという。