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そして時が流れ、ビンは将来の花嫁の田舎で正式に結婚の許可を得る日が来た。ズエンの両親は娘が人生の伴侶を得たことに喜んだものの、ビンの義足姿を見て不安を覚えた。ビンの両親にズエンを紹介した時もまた、同じような反応が返ってきた。「1人で生活することさえ難しいのに、障害者と結婚するのか?」
それでも、2人の決意が揺らぐことはなかった。「自分で選んだ人だからこそ、どんな困難があっても2人で助け合い乗り越えていくことが出来るのです」2人はそう強く信じている。
結婚生活を始めるためには安定した仕事に就かなければならない。しかし、障害者である2人には仕事探しも険しい道のりだった。幸いなことに2人はホーチミン市内の同じ職場で働くことができるようになり、結婚への障壁が一つなくなった。
結婚式を間近に控えたある日、若き新郎新婦のもとを訪れた。2人の表情は晴れやかだった。しかし、心配事は少なくない。ビンは5年前に手術を受けて以来、お金が無かったために、まともな治療を受けていない。ズエンもまた、いつ枯葉剤のさらなる影響が出るか分からない体だ。
親族からは付き合い始めてから1年で結婚するのは早すぎるという声も上がっていたが、2人には十分すぎる時間だったという。「私たちには1分1秒が貴重な時間です。少しでも長く2人で一緒にいられたらという思いでいっぱいです。子供が出来たときのことも考えて、将来は自分たちで小さな店をやっていければと思っています」笑顔でそう語るズエンを、ビンは優しく見守っていた。