(C) Sai Gon tiep thi, Huong Vu 写真の拡大 |
東南部ドンナイ省ロンタイン郡で輪ゴム工場を営むレ・バン・ティエムさんは、南部の農民に近い優しい雰囲気を持つ人だ。実際は輪ゴム生産業界で成功した実業家で、ベトナムで初めて輪ゴムを海外に輸出した人物として知られている。
ティエムさんは1980年代のほぼ10年間、自転車チューブ生産の合作社で従業員として働いていた。仕事はきつく給与も安定していなかったが、夫婦2人でなんとか生活していけた。ところが合作社が解体されることになり失業の危機に直面したティエムさんは、知り合いから中古の輪ゴム製造機械を安く譲ってもらった。
こうしてティエムさんは1991年に、故郷のロンタインで従業員5人を雇って輪ゴム生産を開始した。当時は生産する人が少なかったためか、輪ゴムはホーチミン市で飛ぶように売れた。わずか1か月後には従業員を倍に増やし、機械をフル稼働させて生産した。
生産が順調に回り出したところで、加工用薬剤が不足するという問題が持ち上がった。しかしティエムさんは専門家に相談しながら、一部の薬剤を入れなくても製品の品質を維持する工夫をしていった。「このことはその後もしばらくの間、秘密にしていた。失敗するたびに経験を積ませてもらった」と当時を振り返る。