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[特集]

ベトナム製輪ゴムを世界に輸出する実業家

2011/05/15 08:34 JST更新

(C) Sai Gon tiep thi, Huong Vu
(C) Sai Gon tiep thi, Huong Vu
 東南部ドンナイ省ロンタイン郡で輪ゴム工場を営むレ・バン・ティエムさんは、南部の農民に近い優しい雰囲気を持つ人だ。実際は輪ゴム生産業界で成功した実業家で、ベトナムで初めて輪ゴムを海外に輸出した人物として知られている。  ティエムさんは1980年代のほぼ10年間、自転車チューブ生産の合作社で従業員として働いていた。仕事はきつく給与も安定していなかったが、夫婦2人でなんとか生活していけた。ところが合作社が解体されることになり失業の危機に直面したティエムさんは、知り合いから中古の輪ゴム製造機械を安く譲ってもらった。  こうしてティエムさんは1991年に、故郷のロンタインで従業員5人を雇って輪ゴム生産を開始した。当時は生産する人が少なかったためか、輪ゴムはホーチミン市で飛ぶように売れた。わずか1か月後には従業員を倍に増やし、機械をフル稼働させて生産した。  生産が順調に回り出したところで、加工用薬剤が不足するという問題が持ち上がった。しかしティエムさんは専門家に相談しながら、一部の薬剤を入れなくても製品の品質を維持する工夫をしていった。「このことはその後もしばらくの間、秘密にしていた。失敗するたびに経験を積ませてもらった」と当時を振り返る。

 1994年に輪ゴムの需要が海外でも高まっているとみたティエムさんは、外国企業に売り込みをかけた。これがうまく行き、今では世界18か国に年間数万tのロンタインブランドの輪ゴムを輸出している。従業員の数は一時1000人以上に上ったこともあったが、生産設備の改善により現在は300人体制で生産しているという。  ティエムさんは2008年に、家庭用ゴム手袋の需要が高いことに気がつき、ゴム手袋工場の建設を決めた。当時国内市場には輸入品か低品質の国産品しかなかった。マレーシアから中古の設備を輸入し、社内のエンジニアが改良を加えることで、設備費を低く抑えることができた。今では年間1500万組のゴム手袋を生産しており、ティエムさんは輸出も計画している。  ティエムさんは、「事業を始めた当初は、家族が安心して暮らせることだけを願っていたが、運に恵まれた。私は人様のように学歴がある訳ではなく、商売に関することは本を読んだり、実際に経験したりしたことから学んできた。私に言えることは、商売では信用が最も重要だということだ」と語った。  最後に家族のことについて、「これまで夫婦で一緒に旅行に行ったこともなく、妻には悪いなと感じている。しかし仕事を休む訳にいかないのも事実。留学中の子供たちが戻ってきて、一日も早くこの仕事を継いでくれることが今の願いだ」と素顔をのぞかせた。  

[Sai Gon thiep thi online, 05.05.2011, 08:58 (GMT+7), O]
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