「たった1人の力で成功するのは大変だ。でも多くの人が力を合わせて1人の成功をサポートすれば、その人も別の人を助けるようになる。ベトナム人が中国人やインド人のように世界で活躍するようになるにはこうするしかないと思うんだ」
こう語るのは在日ベトナム人学生青年協会(VYSA)会長のグエン・ビン・キエムさん(28歳)。彼は2000年に日本政府の奨学金を受けて留学、今は東京大学大学院博士課程で研究生活を送っている。「日本に住むベトナム人は約3万人(うち留学生は2500~3000人、研修生は1万6000~1万7000人)と他の国に比べたらとても少ない。アメリカだったらベトナム料理店は簡単に見つかるしリトルサイゴンもあるけれど、日本ではなかなか難しい」。そこから彼は日本でベトナム人コミュニティを作ることを思い立つ。
キエムは何人かの熱心な留学生たちとともに、日本在住のベトナム人青年たちの結束を強め、共同体意識を高めるようなさまざまな活動を開始した。留学生は日本全国に散らばっているし、自身の研究でも時間を取られるため、簡単なことではなかった。しかし次第にベトナム人留学生たちの間にこの運動が浸透していき、2001年11月にVYSAを発足することができた。
発足から8年を経て、VYSAは北海道、東北、関東、東海、京都、大阪、神戸、九州、沖縄に支部を持つようになり、留学生の3分の1以上が各種の活動に参加している。VYSAはまた、祖国の貧しい子どもたちのための奨学金支援活動も行っている。
日本では多くの企業がベトナム人学生に門戸を開き、特にIT(情報技術)企業では引く手あまただという。キエムは今後の自分の就職について、「どんな職場でも良い面、悪い面があると思う。世界のどんな場所でもどんな境遇にあっても自分の能力を発揮することが大事。実力と知識を身に付けて、自信を持って世界へ踏み出したい」と語った。