テト(旧正月)があと1週間にせまったこの時期、多くの企業でテトボーナスが支給され、ボーナスを手にした工員達はこぞって市場・スーパーなどで正月商品を買い揃えている。ベトナム縫製総公社(Vinatex社)もその1つで、今年同社の工員たちは一般的な縫製業工員の平均ボーナスよりも高い1人あたり300万ドン(約2万円)を手にし笑顔でいっぱいだ。
しかし、Vinatex社は国営縫製企業のなかでも3,4社しかない高ボーナス支給企業であり。、ハノイ市にある他の国営企業では現金でのボーナスが支給できず、現物支給という企業も珍しくない。
ハノイ縫製社は今年のテトボーナスを靴下1箱(426足入り)と決定し、この発表を知った工員の間では落胆の声が上がっている。同社のある工員は、「靴下426足は300万ドン相当で、金額的には同等なのだが、靴下を支給されても現金ではないためテト用の商品を買いたくても買えない」と不満を漏らしている。
また、ある工員は「現金を得るためこの靴下を今から売りさばかなくてはならないが、正月はもうすぐそこ、手っ取り早く現金化するにはたたき売りするしかない」とため息をつき、そうした場合には時価300万ドン(約2万円)の靴下が最高でも200万ドン(約1万3000円)ほどに目減りしてしまうという。しかも売りさばく労力も必要だ。
ハノイ市の国営企業にとってテトボーナスは大きな問題で、昨年の旧正月にはある国営靴製造企業が、約束した給料1ヶ月分のボーナスが半月分しか払えず、工員がストライキを起し、さらにテト明け後には100人以上の工員が辞めてしまい操業停止となった。このように多くの国営企業にとって正月は必ずしもおめでたい出来事ではなく、できれば迎えたくないと考えている企業幹部も多いことであろう。