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- 全国に激震が走った華人系不動産違反事件
- 資産横領等に問われた13人が極刑可能性
- 7.4億円収賄の調査リーダーも起訴
華人系不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)の違法社債発行やVTPと密接なコネクションがあるサイゴン商業銀行(SCB)による銀行業務違反などに関する事件で、ベトナム最高人民検察院はこのほど起訴状を発行した。
同事件は、VTP会長のチュオン・ミー・ラン容疑者(女・67歳)が、経営支配権を掌握していたSCBを介して国民や企業から資金を調達し、不動産投資などの名目でSCBにVTP系列企業向けの違法融資を行わせ、同行に多額の被害をもたらしたというもの。
同事件では、86人の容疑者が起訴されており、この中には海外逃亡して指名手配されている複数の容疑者も含まれる。
このうちラン容疑者は、◇資産横領容疑、◇金融機関における融資規定に違反した容疑、◇贈賄容疑で起訴された。資産横領罪については、刑事法第353条第4項で規定されており、最大の量刑は死刑。ラン容疑者は反省の意を示さず、捜査にも協力的ではなかったという。
ラン容疑者だけでなく、他の容疑者11人についても資産横領容疑で起訴され、出廷することとなる。
また、SCBの調査を統括していたベトナム国家銀行(中央銀行)第2調査監視局長のドー・ティ・ニャン容疑者(女・57歳)は、収賄容疑で起訴された。ニャン容疑者が賄賂として受け取った額は520万USD(約7億4000万円)に上った。刑事法第354条第4項によると、こちらの量刑も最大で死刑となっている。
なお、捜査結果によると、ラン容疑者は2011年、◇SCB、◇ティンギアバンク(Tin Nghia Bank) 、◇フィコムバンク(Ficombank)が統合する形で誕生した新生SCBの経営支配権を掌握。SCBの資本金は2012年1月1日時点の10兆VND(約590億円)から15兆VND(約880億円)に引き上げられた。
ラン容疑者は逮捕までに複数の個人・企業の名義を介してSCB株85.0%~91.5%を保有。同容疑者はSCB経営に直接参加していなかったが、同容疑者の側近らがSCBの要職を務めていた。残るSCB株は小口株主約4000人が保有している。
VTPは国内外にペーパーカンパニーを設立する形で1000社以上の系列企業を保有。ラン容疑者の指示のもと、SCBは担保資産を審査せずにVTP系列企業に違法融資を繰り返し実施。VTP系列企業は債務不履行となっており、SCBは多額の不良債権を抱えてしまった。融資金や利息などを含めたラン容疑者らがSCBにもたらした被害総額は415兆VND(約2兆4000億円)に上るとされる。
SCB構造改革の一環として、ベトナム国家銀行(中央銀行)は2017~2018年、同行の全面調査を実施すべく、組織横断調査隊を発足。調査隊は、◇中央銀行、◇政府監査委員会、◇国家財政監視委員会、◇国家監査委員会の幹部から成り、ニャン容疑者が調査隊のリーダーを務めた。
ニャン容疑者らは調査の際、SCBが債務超過となっていること、SCBでのラン容疑者の実際の保有率、VTP系列企業に対するSCBの違法融資を発見したにもかかわらず、賄賂を受け取ることで見て見ぬふりをした。組織横断調査隊が不良債権などSCBの財務データを改ざんして調査結果を操作したため、中央銀行はSCBの実態を把握し、ラン容疑者らの違反を早期に阻止することができなかった。
SCBでは、2022年10月にタンベト証券(TVSI)の会長 兼 社長でSCB取締役を務めていたグエン・ティエン・タイン氏(男性・当時49歳)が脳卒中で急死。さらにVTPのラン会長が社債発行をめぐる詐欺・資産横領容疑で逮捕されたことを受け、多くの預金者がSCBに殺到するなど混乱が起きていた。SCBは2022年10月から特別監視措置を受けているが、中央銀行によると、SCBの状況は制御下にあり、徐々に安定しつつあるという。