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強烈な日差しが襲う昼、ホーチミン市8区ファム・テー・ヒエン(Pham The Hien)通りの宝くじ販売店前にバイクが停まると、ドライバーは何やら店主に指で合図を送り始めた。店主は合点承知と機械の番号を押し、印刷された宝くじを手渡す。
ホーチミン市8区に住む男性ビンさん(48歳)は、一風変わった方法で、財政省傘下のベトナムコンピュータ宝くじ社(ベトロト=Vietlott)が展開する数字選択式宝くじを販売し、毎月大きな売上を上げている。
「暗号で商売がとてもスムーズになりました。狭い家でも何の心配もありませんよ」と言うビンさんは、4年前までは、道路に面したその家で、妻と一緒に工場労働者向けの飲み物販売をしていた。ただ、朝早くから夜遅くまで商っていたものの、固定客があるわけでもなく収入は不安定だった。
妻の健康がすぐれなくなったこともあってビンさんは、飲み物屋をたたみ、それから数か月後にベトロトの販売代理店を始めた。「ベトロト販売は労力もいらないし、夜中まで起きている必要もないので、私たち夫婦も少しずつ元気を取り戻してきました」とビンさん。
ただ販売を始めた当初は、ベトロト自体が売り出し始めたばかりということもあり、順調とはいかなかった。2018~2019年頃になってベトロトがかなり普及すると、ビンさんの販売も伸び始め、月5億~8億VND(約300万~480万円)の売上が立つようになった。
ビンさんの店に来る客は、単純に宝くじを買うためというだけでなく、ビンさんとのやり取りを楽しみにやってきている節もある。
客がバイクで店頭にくると、ビンさんが指を挙げて合図を送る。「指1本なら宝くじ1枚、2本なら2枚、5本なら5枚、指を下に向ければ今日の分、上に向ければ明日の分。こんな感じでお客は何も話す必要がないんです。宝くじの番号は、最近じゃほとんど皆、自分で選ばなくなりましたね。運に任せてっていう感じかな」とビンさんは笑う。
宝くじ販売を始めて4年、過去に店から2億VND(約120万円)の当選が出たこともある。高額当選が出た時には、「当店から大当たり!」といった横断幕を店頭に出して、お祝いしている。