(C)Nong Nghiep Viet Nam 写真の拡大. |
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ノンラー(Non La、円錐形の葉笠)を語るうえで欠かせないのが、ハノイ市タインオアイ郡の中心に位置するチュオン村だ。同村はノンラー作りで有名で、集落の全世帯がノンラー作りを営んでいる。
毎月旧暦の 4日、10日、14日、 20日、24日、30日にはノンラー市場が開かれ、白く真っ新なノンラーが高く積み重ねられた光景を目にすることができる。市場は早朝4時から始まり、吊るされた裸電球の下で取引される。市場ではノンラーの完成品だけでなく、椰子の葉や縁どりの枠、縫い糸などノンラー作りに使う原料も売っているほか、その場でノンラーも作られている。
ノンラーは原料の仕入れから始まり、数多くの工程を経て作られる。工程はほとんど手作業だが、複雑なため誰にでもできるものではなく、繊細さや慎重さが求められる。ノンラー作りで特に大切なのが枠で、きれいな丸型でしっかりしたものが良い。そのため熟年の職人から枠を買う人が多いという。
ノンラー職人のオアインさん(61歳)は、14歳のころから母親に教わりながらノンラー作りを始めた。当時は見よう見まねで作っていたオアインさんも、次第にノンラーの美しさを理解できるようになりノンラー作りが好きになっていったという。「一つひとつ愛情を込めて作っているからね」とオアインさん。チュオン村のノンラーはどこよりも質が良いと、遠くから市場に足を運び、まとめ買いする客も多い。
ノンラーのデザインも時代を追うごとに多様化し、現在では従来のノンラーのほかにスポーツキャップ型や麦わら帽子型、とんがり帽子にタイや韓国の伝統的な帽子を模したものまで数十種類にのぼる。チュオン村のノンラーはこれまでにアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議や東南アジア競技大会(SEA Games)、国際見本市など世界の舞台でも紹介されている。