スタッフがメモを書き込んだ分厚い台本を見ると、フオン・ザンさん(女性・27歳)のような視覚障がいを持つ司会者がどのように膨大な台本の内容を覚え、スタジオで輝くことができるのだろうかと多くの人が驚嘆するだろう。
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ザンさんは収録が始まる1時間以上前にスタジオに入り、スタッフの案内でステージを歩き、空間を把握する。それからスタジオの隅に座ると、台本の上でゆっくりとスマートフォンを動かす。9X世代の女性司会者であるザンさんは、スマートフォンのテキスト読み上げ機能を活用して、分厚い台本を「読んで」記憶するのだ。
点字ではなくスマートフォンを使って台本を読むという、多くの人には馴染みがないであろうこの方法は、司会者歴10年以上のザンさんにとっては生活に欠かすことのできないものだ。「ステージに上がるときは毎回、初めてのつもりで、そして最後のつもりで全力を尽くしています」とザンさん。ザンさんは、スポットライトの下で輝く瞬間をとても大切にしている。視覚障がいを持つザンさんにとって、信頼されることやチャンスを与えられることがあまり多くないからだ。
ザンさんは生まれた時から片目は完全に視力がなく、もう片方の目も通常の10分の1の視力しかなかった。中学1年生(日本の小学6年生に相当)になる頃には、網膜疾患によりザンさんの目は完全に光を失った。暗闇の中でザンさんは、周りの世界とのつながりを失う恐怖に直面した。
「当時、クラスメイトは私と遊ぶことはありませんでした。私も、周りの人たちにどうやって話しかけたらいいかわからなかったんです」とザンさんは語る。ザンさんは1人で教室の隅に座って周囲の音に耳を傾け、クラスメイトたちがふざけて笑い合っている声を聞くだけだった。友達とすぐに打ち解けることができず、勉強するにも困難が伴う。約20年前の当時、視覚障がいを持つ子供の学習環境を整えることは、容易ではなかった。
ザンさんが特別支援学校ではなく普通学校への入学を希望した時、ザンさんの両親は学校の理事会に掛け合い、視覚障がいのある生徒を受け入れてもらえるよう時間をかけて説得した。それからは、ザンさん自身が多くの助けを借りずとも自立して勉強に取り組むことができるということを証明するため、ひたすらに努力を重ねる日々が続いた。
しかし、ザンさんは決して1人ではなかった。そこにはザンさんに寄り添い、しっかりと支える家族の姿があった。妹のミン・チャンさんはこう話す。「家で両親は姉にすべてのことを自分でやらせていました。姉が空間に慣れ、自分で自分のことをできるようになるため、家族全員で声掛けをしました。姉はいつも全力で、できないなどと弱音も吐かず、色々な方法を模索しながらやっていました」。