別の常連客であるズン・アインさんもまた、初めて来店したときはフオンさんと同じように感じた。アインさんは特に、訪れた全ての客が聴覚障がい者のスタッフとコミュニケーションを取る機会を持つことができるというカフェのコンセプトが気に入っている。アインさんは今後、多くの友人や生徒・学生グループにこのカフェを紹介するつもりだ。
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人々がこのカフェのサービスや商品を選択するのは、障がい者への同情ではなく、サービスや商品自体に価値があるからだ。これは、同社の取締役会長であるファム・ベト・ホアイ氏(男性・49歳)の願いでもある。
ホアイ会長は7歳のときに事故に遭い、脚に麻痺が残って車椅子生活となった。ホアイ会長は、障がい者が常に自信を欠き、自分は不幸だと感じていることを深く理解している。こうした障壁は全て、家族や社会の彼らに対する同情から生じているという。
2013年にホアイ会長が社会的企業を設立するにあたり、社会の障がい者に対する認識を変えることに少しでも貢献したいと考えた。「障がい者は哀れで重荷になる存在ではなく、労働意欲があり、サービスや商品を通じて社会に貢献したいという思いを持っています。もっとシンプルに言うと、店を訪れる客にはスタッフのことを『聴覚障がい者』ではなく、『耳が不自由な人たちのコミュニティ』と呼んでほしい。私たちは障がい者ですが、私たちが作る商品を『障がい者の商品』にしたくないんです」と、ホアイ会長は活動のモットーについて教えてくれた。
手工芸品工場を立ち上げた後、カフェや見学スペースを新たに取り入れたのは、商品を多様化し、より多くの障がい者の雇用を創出するためだ。ホアイ会長によると、現在ベトナムには潜在的労働力となる200万人の聴覚障がい者がいる。
彼らにとって唯一の障壁はコミュニケーションだが、コミュニケーションをサポートする手段さえあれば、その障壁は簡単に取り除くことができる。現在、3店舗のマネージャーはディンさん1人だけで、その他の全ての従業員には自分の仕事を決定する権限が与えられている。
キムベトスペースでは、2020年からハドン区バンフックシルク村のツアーを組み合わせて、数百人の見学者や体験者を受け入れてきた。ここでは手話を学んでスタッフと交流するだけでなく、土産物作りを体験したり、ドリンクや郷土料理を楽しんだりすることもできる。