ハンさんは、西北部地方ホアビン省の農家で生まれ育ったこと、そして姉妹3人とも生まれつき聴覚障がいがあることを、マネージャー 兼 通訳者を通して教えてくれた。先生の声を聞くことができないため、普通学校で学ぶのはとても困難で、何とか中学4年生(日本の中学3年生に相当)まで終えてからは家で両親の仕事を手伝った。
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そして18歳の時、2人の姉と同じように縫製工場に働きに出たが、周りとのコミュニケーションが難しく劣等感を感じ、すぐに辞めてしまった。
2020年、ハンさんは聴覚障がい者のコミュニティの友人の紹介でカフェの仕事に応募した。そこでドリンクの作り方、接客の仕方など今まで考えもしなかった仕事のトレーニングを受けることができた。
今まで働いてきた中で1番思い出に残っていることは、団体客からドリンクの美味しさやサービスへの満足感、空間の快適さを称賛するメモをもらったことだ。たとえ小さな行動でも、客から認められ、自分にも良い仕事ができたと感じると、ハンさんは幸せな気持ちになるという。
ハンさんだけでなく、カフェのスタッフの多くは学校を辞めて早くから働きに出ており、中には小学3年生の途中までしか学校に行っておらず、文字がすらすらと読めないスタッフもいる。
マネージャーのグエン・ティ・ディンさんは、この会社に8年間関わる中で、スタッフから色々な打ち明け話を聞いてきた。
例えば、以前あるスタッフが健常者と一緒に働いていた際、聴覚障がい者だと仕事の配分などでも平等に接してもらえず、悲しい気持ちになったという。彼らはこのカフェと工場で働くようになってから、仕事でたくさんの驚きがありつつも、常に責任を持って仕事に取り組んでいる。ディンさんにとって最も嬉しいことは、多くのスタッフから、ここでの仕事はとても幸せで満足している、と常々伝えてもらえることだ。
常連客の1人であるタイン・フオンさんは友人の紹介でこの店を知った。初めてカフェを訪れたときは、開放的で静かな空間だという印象を受けた。障がい者が働いているカフェでも、他によくある慈善的な重い感じがなかったという。
フオンさんはカフェのスタッフや商品が気に入り、自分の子どもも店に連れて行って一緒にスタッフと交流したり、1つの商品ができ上がるまでに多くの工程があることを子供に学ばせるため、商品ができる工程を見学したり、キーホルダーのぬいぐるみ作りを体験したりさせた。