紅河デルタ地方ナムディン省ザオトゥイ地域に、病気治療のために飲尿する習慣のある村があるという。以前、中国に自分の尿をビールのように飲む地域があるという話を聞いたときには、世界には不思議な習慣があるものだと思ったが、ベトナムにもそんな村があるとは信じられなかった。
(C)Bao Dat Viet, 飲尿を続けるボンさん |
(C)Bao Dat Viet, 44歳のころのボンさん(中央) |
(C)Bao Dat Viet, 使わなくなった薬 |
「ある地区では病気を治すのに飲尿が良いという言い伝えがあり、本当に皆飲尿している」と語るザオタン村診療所のブー・ボン・ヒエウさん。そして、ガン治療のために現在飲尿しているというボンさんという女性の住所を教えてくれた。
ボンさんの家を訪ねると、痩せた女性が「ここ半年ほど、毎日のように飲尿について聞かせてほしいという人が来ますよ」と出迎えてくれた。彼女がボンさんだ。本当に飲尿しているのかこの目で確かめに来たと言うと、ボンさんは「本当です。恥ずかしいことでも何でもないですよ。もう1年以上飲尿を続けて、おかげで生きながらえています。お昼までここにいるなら、飲むところをお見せ出来ますよ」と微笑んだ。自分の尿を飲むのはどのような感覚なのか。彼女は「特に怖いこともないし、慣れると手放せなくなるところがアルコール中毒みたい」と言った。
彼女が飲尿を始めたのは、ガンになったのがきっかけだ。彼女は16歳という若さで結婚し、畑仕事に明け暮れた。子だくさんで、5人の子どもと大勢の孫に恵まれた。だが、2009年頃、乳房にできたしこりが大きくなっていくのに気づく。とうとう鶏卵ほどの大きさになり、痛みに耐えられなくなった彼女はようやく病院へ行き、ガンだとわかった。夫は妻の病気を治そうと奔走し、手術は成功したが、げっそり痩せ、髪は抜け落ちた。2か月間入院し、退院した頃には財産をほぼ使い果たしていた。