ベトナム系アメリカ人デザイナーのクロエ・ダオは、昨年の「プロジェクト・ランウェイ2006」でグランプリを獲得した。去年一年間を通して彼女は何を得ることができ、10万米ドル(約1200万円)の賞金はどのように彼女の仕事に生かされるのだろうか。
先日、モード誌「フォーブス」の女性記者がクロエ・ダオへのインタビューを行い、テレビを利用したクロエの壮大なビジネスプランについての記事を書いた。それによると、クロエは今年5月にコレクションを発表し、QVCテレビの通信販売システムを通じた販売を開始するという。彼女の最新のデザインは「シンプリー・クロエ・ダオ」という冊子にまとめられる。今回彼女は30~75米ドル(3600~9000円)という価格設定で、普通の女性たちの層を取り込んでいきたいという。
このテレビ通販を利用する試みは、在米ベトナム人デザイナー仲間にとっても喜ぶべき出来事と受けとめられている。彼女ほど名前が通っていれば、今回の方法はより多くの消費者に商品を届ける大きなチャンスとなるだろう。また、彼女の活躍は、ファッションの中心地ニューヨークで同じように働く多くの同胞たちにとっても大きな励みとなる。シンプリー・クロエ・ダオの躍進は、アラン・チュオン、トム・K・グエン、リン/リン、バーバラ・ブイ、タイン・ローズなど、多くの在米ベトナムブランドの成長と軌を一にするものだ。
テレビ通販を利用するにあたり、ブルーミングデイルス、メイシーズ、サックス・フィフス・アベニューなど古くからある小売業者との関係を維持しつつ進めているあたりは、彼女のビジネスの手腕の高さをうかがわせる。プロジェクト・ランウェイのかつての受賞者の中でも、このような独創的なアイデアを打ち出したのは彼女が初めてだ。
ウィキペディアによると、QVCは光ケーブルや衛星放送を利用した通販システムで、1986年に設立された。アメリカ、イギリス、日本、ドイツの4カ国で1億4100万世帯の加入者を擁する。アメリカQVCでは年中無休24時間連続で放映を行っており、その加入者数は8500万世帯に上る。今やQVCはアメリカのホームショッピング界でトップの座を占めており、2004年の売り上げは41億米ドル(約4800億円)に達している。
クロエ・ダオの商品が午後6時から11時のゴールデンタイムに紹介された時に、どれだけの潜在的な顧客が開拓されるか想像してみてほしい。おそらく従来の販売方法だけではなしえなかったような新規層の取り込みが可能となるだろう。専門家たちはこの層を150万人に上るだろうと期待を込めて予想している。
フォーブス誌の他にもウォール・ストリート・ジャーナルを初めとしたビジネス誌や、ファッショントライブズやウーマンズ・ウエア・デイリーなどのファッション誌も、それぞれの専門的な立場からこのニュースを好意的に報じている。
シンプリー・クロエ・ダオの将来は明るい。専門性に加え最も重要なのは、この若きデザイナーが時代をつかむことに本当にたけているということだ。彼女はまさに時流に乗る人といえるだろう。