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ホアさんいわく、この仕事では技術がプロフェッショナルであるというだけでなく、客と長い関係を続けていけるよう、客を満足させる方法を知っておかなければならないという。
「昔からずっと、毎日新聞を読んで、ホーチミン市の情報をチェックして、お客さんとの話のネタにしています。美容系の仕事なので、服装もきちんとしていないといけません。みすぼらしい格好じゃ説得力がありませんから。ハサミやバリカン、ケープなんかも定期的にきれいにしていますし、カミソリの刃も毎回交換しています。路上の仕事ではありますが、細心の注意を払い、お客さんに最高のサービスを提供しなければいけません」とホアさんは語る。
かつて、まだ美容院が珍しかったころ、路上床屋には1日に何十人もの客が訪れていた。路上床屋を営む職人も、今の何十倍もいた。しかし、この仕事を続けることが難しくなった今、多くの人が路上床屋の仕事を辞めて、もっと収入の高い、別の仕事に転職していった。
ホーチミン市で路上床屋を開いているグエン・バン・トゥンさん(男性・54歳)は、南部メコンデルタ地方ビンロン省出身だ。トゥンさんはホーチミン市の路上床屋の中でも最も人気のある1人で、店の立地や技術、サービスの評価の高さから、「5つ星の路上床屋」と呼ばれている。
トゥンさんは1980年代後半に、簡素な仕事道具一式と田舎の先生から教わったちょっとしたコツだけを持って、ビンロン省からホーチミン市に移り住んだ。トゥンさんは平均して1日に10~12人の客を扱うが、ほとんどが親しい知人や、知人の紹介だ。
トゥンさんの耳かきの気持ちよさにうつらうつらしている客のフウ・タイさん(男性・42歳)は、もう10年以上ここで月に1回、髪を切っている。