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「眠らない街」、ホーチミン市1区ブイビエン通りのバックパッカー街に音楽が鳴り響き、カラフルなライトが通りを照らす午前0時、それは、子供たちが路上で火を吹く見世物を始める時間でもある。
午前0時、南部メコンデルタ地方ティエンザン省出身のカンくん(12歳)は、通りの真ん中に出て行った。頬を膨らませて大きく1口分のガソリンを口に含み、あらかじめ準備しておいた、布を巻いた鉄の箸に火をつけた。
近くに立っていた観光客のグループがゆっくりと後ずさりした数秒後、少年の口から炎が噴出し、ディスコクラブの2階の高さまで燃え上がった。すると、まるでプロのサーカスのパフォーマンスを観賞しているかのような歓声と感嘆の声が通りに響いた。
2分間の火吹きパフォーマンスを終えると、カンくんは空き缶を持って通りを歩き回る。パフォーマンスが面白かったと思ったら、客が空き缶に少しばかりのチップを入れてくれる。もちろん、空き缶が空っぽのまま1日が終わることも珍しくはない。
「これは生計を立てるための仕事で、チップがもらえない日だって受け入れないといけないんです」とカンくんは屈託なく笑った。
火吹きパフォーマンスは今や、大都市の路上で生計を立てるための仕事となっている。特にホーチミン市では、ガソリンを口に含み、火を吹いている子供たちの姿が観光客の間でもおなじみとなっている。
子供たちは火吹きパフォーマンスを終えると、客にチップを求めたり、物を売ったりしてお金を稼ぐ。さらに、パフォーマンスをより面白くしようと、ヘビを飲み込んだり、剃刀の刃や電球を噛んだりといった芸までする子供たちもいる。
客に頭を下げてお礼を言いながら、カンくんは口の周りに残ったガソリンを手で拭った。そして、客たちが自分の顎の傷痕に驚いている様子を見て、火を吹く時に何度かうっかり火傷をしてしまったが、薬は塗らなかったのだと笑って話した。
「火を吹く仕事を始めてまだ数日しか経っていないんです。少し前は宝くじや飴を売っていたんですが、買ってくれる人はほとんどいませんでした。火を吹いている友達のほうがもっとお金を稼いでいたので、何度か教えてもらって僕も火吹きができるようになりました」とカンくん。
ホーチミン市直轄トゥードゥック市在住のタイくん(16歳)もまた、2か月前にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でいくつか動画を見て、火を吹く練習を始めた。タイくんは何度も失敗を繰り返しながら、火傷をしない動きをマスターした。タイくんとカン君は友達同士で、2人は毎晩路上で火を吹いて、仕事を終えると一緒に家路につく。