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例えば紙幣の3分の1が焼けて変形してしまっていたり、真っ二つに破れそうだったりして銀行が引き換えてくれるか確かでない場合、ラムさんは信用を得るために客に自分の身分証明書を預けて、その場で買い取らずに銀行に行くようにしている。
「だから、私のIDカードや運転免許証はいつもあちこちにあるんです」とラムさんはユーモアたっぷりに話す。もし、銀行で引き換えられれば、手間賃として客から3万~5万VND(約182~303円)を受け取っている。また、遠方の客には、自宅に紙幣を受け取りに行く分のガソリン代を援助してもらっている。
この副業でラムさんは月に300万~500万VND(約1万8200~3万0300円)の収入を得ている。その代わり、その日に買い取った紙幣を整理するのに毎晩20~40分ほどかかっている。
同じく破損した紙幣の買い取り業をして10年近く経つレ・グエン・トゥアン・アインさん(男性・34歳)は、過去に、けんかをして紙幣を真っ二つに破ってしまったという夫婦から、その紙幣を買い取ってほしいと懇願されたことがある。その時は額面の80%の金額で買い取り、破れた部分をテープで貼って難を逃れた。「もし、記番号がなくなっていたらお断りするしかなかったので、助かりました」とアインさん。
アインさんは、今から8年前にホーチミン市1区で起きた火災により、多くの人の財産が焼けてしまったときのことを今でも覚えている。もちろん、火災で紙幣も焼けてしまった。そこで市当局は、焼けた紙幣を銀行に持って行くよう被災者に通知する公文書を出した。小額紙幣については、被災者は少しでも価値を取り戻すために、アインさんたちのような買い取り業者のところへ持って行った。
この10年ほどは、オンライン取引が普及したことで、破損した紙幣の買い取りという仕事はブームが去ってしまった。現在の客といえば、古銭の売買をする人たちなどほんの一部にすぎない。
アインさんによると、オンライン取引が生活の隅々まで浸透しつつある中、破損した紙幣の買い取りの需要は特にこの5年で急激に減少しているという。しかし、流通しなくなった紙幣でも、その珍しさや希少さから高値がつくこともある。そのため、アインさんはそういった紙幣も買い取っている。「ボロボロの紙幣でも、その紙幣にしかない価値があるんです」とアインさんは語った。