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ハノイ市旧市街にある共同便所の屋根上で40年以上暮らしている夫婦がいる。
グエン・フン・ハイさん(男性・88歳)とグエン・ティ・サムさん(女性・78歳)の「家」は、ホアンキエム区ハンバック(Hang Bac)通りの小さな路地裏の、共同便所の上にある。
ハイさんは毎日、ハンバック通りの角で自作の自転車のそばに立ち、タイヤの空気を入れにくる客を待っている。ハイさんにとって、空気入れの仕事は大きな収入が得られるものではないが、老後の楽しみなのだという。
ハイさんのはきはきとした話し声を聞いて、ほとんどの人は彼が90歳近いとは思いもしないだろう。「自転車の空気入れや修理は仕事であり、楽しみでもあるんです。通りを眺めたり、行き交う人を眺めたりするのはいいものですよ。家にいると窮屈で息苦しくて」とハイさん。
かつて、ハンバック通りの小さな路地裏には、ハイさん一家しか住んでいなかった。それから数世帯が住むようになり、1975年にハイさんは同居していた家族に迷惑をかけたくないからと実家を出て、共同便所の上のスペースに1人暮らし用の部屋を作った。
1989年にハイさんとサムさんは結婚し、手狭になったため、部屋を拡張した。以来、2人の子供が生まれても、この狭い家で、一家4人で暮らした。苦労も多かったが、夫婦で何とか乗り越えてきた。
同じ路地裏に暮らす世帯の中で、共同便所の屋根上に住んでいるのはハイさん夫婦だけだという。部屋の広さは約10m2で、壁は剥がれ落ち、カビだらけだ。室内の棚の上は祭壇になっている。ベッドは1つしかなく、妻のサムさんは床にゴザを敷いて寝る。一家の生活のすべてが、この1部屋の中で行われる。