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仕立て屋の仕事をして20年以上になるドアン・ティ・グエットさん(女性・46歳)は、アオザイが欲しくても金銭的な余裕がない女性たちを数多く見てきた。そこで、妹と一緒に「0VND」のアオザイ店を開くことに決めた。
無料のアオザイ店のアイデアは、4年前に視覚障害のある少女がアオザイを仕立てにグエットさんの店を訪れた時に生まれた。少女の母親は、アオザイを着たいという娘の夢を叶えるために丸1年かけてお金を貯めたと言ったのだった。
母親の話に心を打たれたグエットさんは妹と話し合い、自分の店を、困難な状況にある人たちに無料でアオザイを提供する店に変えることにした。「どんな人であろうと、どんな境遇の人であろうと、ベトナムの女性にアオザイを着てもらいたいんです」とグエットさんは語る。
しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で計画は2年延期になった。グエットさんはさらに1年かけて、常連客や友人、知人などから古いアオザイの寄付を集めた。「我が家にあったアオザイの8割以上はお店用にして、必要な時に着る1~2着だけを残しました」とグエットさん。
グエットさんは寄付してくれた人からアオザイを受け取ると、ほつれなどがないか確認し、修繕、洗濯、アイロンがけをする。さらに、顧客が自分に合ったアオザイを見つけやすいよう、色ごとに分け、3か所の寸法を記したタグをつける。
そして2022年3月8日、グエットさん姉妹の「0VNDアオザイ店」が、ホーチミン市直轄トゥードゥック市チュオント街区ダンバンビー(Dang Van Bi)通りに正式にオープンした。
初日は300着のアオザイが新しい持ち主に手渡された。当日は忙しく、グエットさん一家は17時にようやく朝食にありつけたという。「皆さんのアオザイへの想いがこれほどまでに大きいものだとは思ってもいませんでした。疲れましたが、とても幸せな1日でした」とグエットさんは振り返る。