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肌寒い真夜中、貧しい労働者たちはハンモックに横たわってぐっすりと眠る。荒天の真っ只中、お金がない人や路頭に迷った人もまた、モーテルやホテルに泊まるよりもお金をかけずにやわらかいハンモックに身体を預ける。
深夜0時、ホーチミン市直轄トゥードゥック市の農産物卸売市場の横にあるハンモックカフェに、1人の白髪の老婆が杖をつきながら入っていく。彼女はボー・ティ・クックさん(77歳、南中部沿岸地方クアンナム省出身)。この数年間、ハンモックを借りて寝泊まりしている。
ハンモックのほこりをゆっくりと払い、寒さをしのぐためにマスク付きの帽子で顔まで覆ったクックさんは、長いことこのハンモックを使っていて、どれが自分のハンモックかすぐに判別できるように服をかけて目印にしているのだと教えてくれた。
クックさんは夫と子供を戦争で亡くし、1人で故郷から東南部地方ビンズオン省に移り住んだ。生計を立てるために宝くじを売り、それからホーチミン市に移って、今もなお宝くじを売っている。
「この市場は人が多いので、宝くじも売りやすいんです。午後に200枚受け取って、売れ残った分は翌日売るんですよ」とクックさん。
濁りのある目で外を眺めながら、今夜は妙に寒いわね、と言い、膝が痛くて眠れないかもしれないと不安げだ。クックさんは翌日売る分の宝くじが入ったかごを抱きしめ、毛布で身体を覆ったが、市場に停まっているトラックの積み下ろしの音が気になってなかなか眠りにつけないようだ。
クックさんも他の人たちと同じように、部屋を借りる代わりにハンモックを借りて寝泊まりすることを選んでいる。こういった人たちにとって、「ホテル」というのはあまりにも遠い存在だ。
ハンモックカフェから少し離れた道端で、グエン・ズイ・リンさん(男性・34歳、東南部地方ドンナイ省出身)は眠れずにスマホをいじっていた。「市場で荷物の積み下ろしや作業の手伝いの仕事をしているので、仕事の声がかかるまでよくハンモックを借りています。そんなに眠れませんが、仕事には便利だし、安いので」と、リンさんはあくびをしながら言った。
一方、12区のタントイヒエップ陸橋のふもとの近くでは、3~4軒のハンモックカフェが明かりをつけて客を待っている。うち1軒はかなり広々としており、40台ほどのハンモックがほぼ満席になっている。
疲れた様子で店内に入ってきたチャン・バン・ダットさん(男性・41歳、南部メコンデルタ地方ドンタップ省出身)は配車アプリの運転手で、8区に部屋を借りているものの、よく深夜に仕事を受けるためこうしてハンモックで仮眠を取るのだという。