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「正直なところ、3日に1回しか水を浴びられないこともあります。最初のころは車両の清掃もしていましたが、第4波があまりにも長引いているので今はもうしていません。新型コロナが収束したら、インスタントラーメンと卵はもう絶対に食べないでしょうね。首相指示第16号の適用中は1日2食、インスタントラーメンと卵しか食べていなかったので」とクオンさんは笑う。
1人暮らしのクオンさんの持ち物は少なく、車内にはインスタントラーメンを調理するためのカセットコンロ、水を入れるバケツ、蚊よけスプレー、寝る時に敷くシートがあるくらいだ。水浴びや皿洗いはバスのステップで行っている。
電気がないため車内は閉塞感がある。日中、クオンさんと同僚たちはバスターミナルの近くにある公園に行ってお茶をいれて座り、雨が降り出すとバスに戻る。夜になると車内はとても暑くなるが、蚊が入ってこないように窓を閉め切って寝ている。
車内にある唯一の電化製品といえば携帯電話だけで、充電が切れればバスターミナル内の宿舎に住んでいる同僚の部屋に行って充電させてもらうしかない。夜の唯一の明かりは携帯電話のライトだけで、電池が切れた夜には早く寝て、電池があれば朝まで起きていることもある。
一家の大黒柱であるクオンさんは、故郷にいる家族の話になると涙を流した。「家族も大変な状況の中、家族と一緒にいることもできず、仕送りもできません。でも、家族に心配をかけないよう、歯を食いしばって笑顔を作り、自分は元気だと言わなければならないんです」と打ち明けた。
運転手のファン・バン・ホアンさん(男性・48歳)と、同じバスの車掌である妻もまた、家賃が支払えず、協同組合に頼んで53番バスの車内で生活させてもらっている。夫婦はこの仕事をして10年余りになる。ホアンさんはわずかな貯金を切り崩して大きなガスコンロを購入し、車内に電気を引いて扇風機や電球などを使っている。