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ちょうど同時期、ベトナムにいる夫から母親が亡くなったという知らせを受け取った。「涙で目がかすみ、手紙を全部読み終えるまでに5回も読み返しました」とベトさん。ベトさんがタイで仕事を続けていられたのは、故郷で子供や年老いた母親、そして病気の妹の世話をしてくれていた夫のグエン・チョン・ウエンさんのおかげだった。
「当時、田舎では海外に働きに出る人がほとんどいなかったので、皆が私を哀れみの目で見ていました。でも、どんな時も私たち夫婦は将来を信じ、私は妻を応援していました」と夫のウエンさんは語る。以前、長きにわたり生花の生産・販売をしていたベトさん夫妻は、顧客のニーズを把握する経験に長けていた。
ベトさんは2006年に故郷ベトナムに帰り、2000万VND(約9万7000円)余りを投じて起業した。「プリザーブドフラワーの材料は海外から輸入する必要がありますが、素材となる花はベトナム産がとても美しく、種類も豊富です」とベトさん。材料の調達や市場の調査に2年を費やし、ようやくベトさんはベトナムのプリザーブドフラワー業界に乗り出した。
広さが10m2以上もある大きな木製のテーブルの上で、最初に赤いバラの花5本のプリザーブドフラワーを制作した。ベトさんはバイクでタインホア市内のとある店に向かい、制作したプリザーブドフラワーの販売を手伝って欲しいと依頼した。プリザーブドフラワー1本につき16万VND(約780円)で販売し、このうち7万VND(約340円)を店に支払った。1か月後にベトさんがその店を訪れると、驚くことに商品はとっくに売り切れていた。
プリザーブドフラワー1本あたりの値段は決して安くないが、それでも購入する人がいるということがわかり、ベトさんは市場を拡大していくことに決めた。商品を持ってハノイ市や北中部地方ゲアン省、東北部地方クアンニン省ハロン市などを回り、販売した。
最初の1か月は数十本のプリザーブドフラワーを制作して売り切ると、次は数百本を制作した。現在では毎月5000本ものプリザーブドフラワーを市場に卸しており、ベトさん夫妻のプリザーブドフラワー事業の収入は年平均10億VND(約485万円)を超えている。
「竹林を歩いているだけでは、自分の限界を知ることはできなかったでしょう。多くの人は、50歳で人生の半分が過ぎたと言いますが、私はそのタイミングで起業しました。確実に言えるのは、情熱と決意さえあれば、何かを始めるのに遅過ぎることはない、ということです」とベトさんは語った。