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2011年、トゥーさんは男の子を出産し、子供を連れて父親を訪ねた。孫が来ると事前に聞いていたトゥーさんの父親は、孫のためにオムツや離乳食などのベビー用品を大量に買い込んだが、娘の前では自分が買ったことを決して認めなかった。
ある昼下がり、トゥーさんが外で洗濯をしているときに子供が目を覚まし、激しく泣き出した。すると、トゥーさんの父親は「赤ちゃんが泣いているぞ」と思わず口にした。それは、父親が数年ぶりに娘に話しかけた言葉だった。
トゥーさんの父親は、「お父さんはどこだろうね」と話しかけながら孫をあやしていた。妻から父親の様子を聞いて、父親が心を開いてくれたことがわかったクオンさんは、翌日にザライ省へ駆けつけ、ようやく父親と2人で話をすることができた。トゥーさんの父親は「おれの娘を苦しませるなよ」と静かに伝え、クオンさんは「お義父さん、約束します」と誓った。
2015年、夫妻はお金を借りて面積140m2の土地を購入し、家を建てた。2人目の男の子が生まれ、家族はよりあたたかく賑やかな空気に包まれた。クアンさんのインターネットカフェ経営の稼ぎは、家族が楽しく生活し、子供を育てるのには十分だった。
しかし、2017年初めにクオンさんは店を妻に任せ、クリーン農業を学ぶために東南部地方ビンズオン省と南中部高原地方ラムドン省ダラット市に出かけて行くようになった。そして土地所有証明書を抵当に入れて銀行からお金を借り、ダナン市ホアバン郡にある3haの土地を借りて、ハイテク技術を用いた野菜やメロンの栽培を始めた。
1年目は赤字、2年目は五分五分となり、2020年には2億~3億VND(約92万~140万円)の利益が出る見通しだったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で先が見えなくなってしまった。農作物の主な販売先であるレストランやホテルが閉業に追い込まれ、行き先を失った大量の農作物が手元に残った。
こうした中、クオンさんのところで野菜を買ったある客が、クオンさんの農場の熟したメロンの写真をインターネットに投稿したところ、ダナン市に住む多くの人々がメッセージや電話を通じて購入を申し出てくれた。これを機に、夫妻は毎日約120kgものメロンをバイクに積んで、市内のあちこちへ配達に出かけるようになった。平均して1日に約200kmの距離を移動し、100件を超える注文を受けている。
2人に苦労は多いが、夫妻の幸せな笑い声は今日も通りに響いている。