(C) Thanh Nien 写真の拡大 |
(C) Thanh Nien 写真の拡大 |
4年後、ベトナムへ帰国したトアイさんは、ホーチミン市教区のHIV/エイズ患者介護施設の管理を任された。市内中の病院を回り、身寄りのない女性患者を訪問しては、薬から衣食住まで世話をした。助けを必要とする人が日を追うごとに増えたため、2005年に施設用としてフーニュアン区に一軒家を借りた。当初は子供5人が入所していたが、翌年には入所児童が5倍に増えたため、トゥードゥック区内のより広い場所に施設を移転した。
トアイさんはまず、夫も家族もいない苦境に置かれた女性を説得することから始めた。女性たちはベッドの上で絶望の中で最期の日を待ち、その日その日を過ごすためのお金を必要としている。そのため、病床の母親たちに売人が赤ん坊の買い取りを持ちかけてくることもある。そんな時の赤ん坊の命はたったの1000万~1500万VND(約4万8000~7万2000円)。この時代に、今尚このような残酷で哀しい人身売買があるだろうか。
赤ん坊たちが売人たちの手に行かないように、間もなく逝く母親に代わり瞳を開けたばかりの天使を育てるため、トアイさんは女性に赤ん坊を自分に「売る」よう説得することから始めた。
トアイさんの願いはただ一つ、お腹を痛めて生んだばかりの我が子を売らなければならなかった母親と「品物」と化した赤ん坊がそれぞれ普通の暮らしを送れるようになること。誰かを責めることはしないが、仮に責めるとするならば「品物」を買い逃した自分自身だとトアイさんはいう。
取引が成立しても病院を出るまでは油断できない。先を越された売人たちが「品物」の横取りを図ることもあるためだ。過去には関連当局に護衛してもらい帰宅したこともあった。
赤ん坊はみな母親を必要とし、母親もまた赤ん坊の泣き顔や小さな手足を目にしてお乳をあげれば赤ん坊を手放したくなくなるのは当然のこと。トアイさんはいつも母親たちに赤ん坊と一緒に施設へ来るよう説得する。「数日間の里帰り産休だと思って、施設で一緒に赤ん坊の面倒を看てください」と。