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学期が始まってから、ティエットさんは夕方4時になるとアイギア~ダナン間の40kmの道のりを路線バスに乗って大学へ向かった。帰路に着くのは夜11時、孫に自宅まで連れて帰ってもらう。
「勉強も論文を書くのも全く苦になりません。ただ行き来がねぇ」とティエットさん。孫もいつでもティエットさんを送り届けられるわけではない。孫や親類が忙しい時には、宿屋に泊まって翌日そのまま大学へ行っていたのだという。
特に雨風が強い季節が大変で、家に着く頃にはシャツもズボンもずぶ濡れのこともあった。それだけでなく、ティエットさんは慢性肺疾患を患っているため、何より苦労が多いのが通学だった。それでもティエットさんは挫けなかった。修士課程の2年間、ティエットさんは常に一番乗りで教室に入り、皆勤を成し遂げた。
そして遂に、大歓声の中でティエットさんは孫ほどの年齢の若者たちに交じって最年長で修士課程の修了証書を受け取った。修了証書を手にした気持ちを問うと、ティエットさんはこう答えた。
「若者は学歴が必要でしょうが、私が勉強するのは学歴のためではありません。この歳で学歴も何もないですからね。脳を働かせるために勉強するんです。人生の中で起こった出来事を忘れないためにね。歳をとって物事を忘れていくことが年寄りには一番怖いことなんですよ」。
85歳で卒業式に出席し、白髪にアカデミックガウンを羽織り角帽を被ったティエットさんの写真は、今後もダナン市で勉学を志す幅広い世代の学生や教員たちの励みになることだろう。