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長男は幼い頃に他界し、次男は現在もクアンさん夫妻と一緒に暮らしているが、学歴が低く、定職には就けていない。妻のキウさんは心臓病と糖尿病を患い重労働ができないため、クアンさんは毎朝キウさんとケーキを作り、午後になるとケースに詰め込んだケーキを抱えて、1人でバスかバイクタクシーに乗ってグエンチーフオン通りへ出る。そして、路上に腰掛けてケーキを売る。
ケーキ作りでは、クアンさんが小麦粉と卵を混ぜる役目だ。目は見えないが、手に染み付いた長年の感覚で材料を混ぜ合わせて、なめらかな生地を作る。これをキウさんが、型に流し入れてふんわりと焼き上げる。
以前はお金を騙し取られることの多かったクアンさんだが、今やもう紙幣を軽く触っただけでいくらなのかがすぐにわかる「紙幣識別のプロ」だ。ケーキ1個を8000VND(約46円)で売って、毎日約8万~10万VND(約460~570円)の利益を得ている。
クアンさんは、ケーキを作って売るだけでなく、使った道具の洗い物も身の回りのこともすべて自分でこなす。タバコだって吸う。「目は不自由だけれど、老いても体はぴんぴんしています。だから頑張って働くのは当然のこと。稼いだお金で家賃と食費をまかない、万が一の場合に備えてちょっとした貯金だってできますよ」と自信たっぷりに語った。