(C) Tien phong, Ho Huy Son 写真の拡大 |
紅河デルタ地方タイビン省ミンタン村に住むグエン・ビック・ランさんは、これまで海外の文学作品16本を翻訳した女性翻訳家だ。彼女の作品は読者はもちろん作家の間でも高い評価を受けている。一方で、彼女は難病の女性翻訳家としても知られている。彼女の病名は「筋ジストロフィー」。現代医療では、根本的治療法がない難病である。
発病後は学校にも通えなくなり、人生の目標を見失いかけていたランさんだったが、独学で英語の勉強を始めて、ついには大学の英文学科のカリキュラムを修了する。その後、自分の知識を活かせるようにと、自宅で無料の英語クラスを開くことにした。当時、地元では英語の教師がおらず、子供たちは英語を学ぶ機会を失くしていた。筋力の衰えた手で、床に置いた黒板に字を書くことは大変だったが、クラスで子供たちに教えることは生きがいになった。毎回、成績優秀者には、自宅の庭で育ったリンゴを贈るのがクラスの習慣になり、クラスはいつしか「リンゴのクラス」と呼ばれるようになった。
「リンゴのクラス」を始めて4年が過ぎたころランさんは病気が悪化し、入院生活を強いられるようになった。体力が衰え、クラスを続けることも出来なくなった。心身ともに弱っているランさんを何とか励まそうとした叔母からの薦めでランさんは小説の翻訳を始めた。