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ここ1年ほど、ハノイ市テレビ局近くのフイン・トゥック・カン通りで小柄な靴磨きの青年を見かける。その丁寧な作業と礼儀正しい言葉遣いが印象的な青年の名前はグエン・バン・フックさん(20歳)、11歳から靴磨きを始めこの道10年のベテランだ。
フックさんは靴磨きをしながら勉強に励み、今年ハノイ市のアカデミー・オブ・ジャーナリズム・コミュニケーションに30点満点の入学試験で23点の高得点で合格した勉強家だ。
フックさんは同市タインオアイ郡カオズオン村で両親と4人の姉弟と暮らしていたが、父親は長い病床生活の末、フックさんが11歳の時に亡くなった。父親の治療のために1億ドン(約40万円)の借金を抱えたフックさん家族には、子供5人分の学費を払うどころか、その日の食べ物さえ買うのがやっとだった。
借金の返済と5人の子供を養うために苦労している母親を少しでも楽にさせようと、フックさんは友達と連れ立って6年生の時に靴磨きを始めた。かつての「同業者」の多くは、今では結婚し子供を授かり、子供と一緒に靴磨きをしているという。
「靴磨きで1日5万~10万ドン稼げたらそれで満足する人は多いけれど、私は将来もっと良い教育を受けて、もっと良い暮らしをしたいという思いがありましたから、勉強を怠けるという気持ちにはなりませんでした」とフックさん。小中高と毎朝靴磨きに出かけ、夕方から夜にかけて家で勉強に励み、在学中は毎年優秀な生徒として表彰されたと語るフックさんは誇らしげだ。
フックさんがある通りで靴磨きを始めたばかりの頃、その界隈を仕切る靴磨きの少年グループに殴られ寝込んだことがあるが、それでもその通りに通い続けているとフックさんをいじめる人は次第にいなくなったという。
フックさんが靴磨きを通じて得たのはお金だけではない。苦しみや困難はもちろんだが、のどが渇いている時にそっと水を差し出してくれたカフェの女主人から人の優しさ、合格祈願と言って本をくれた先生などから向学心を学んだ。
大学入学後の計画は?という問いに、フックさんは当面は靴磨きを続け自活すること、そしてジャーナリズムを学ぶ上では欠かせないカメラとレコーダーを買うつもりだという。その後はアルバイトをしながら、記事を執筆して新聞社に投稿し、将来は一流の新聞記者を目指すと、フックさんの決意は固い。