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フランス・パリ郊外にあるエブリー(Evry)市の刑事法院は11日、ベトナム戦争時に米軍が使用した「エージェント・オレンジ(Agent Orange)」と呼ばれる有毒な枯葉剤(ダイオキシン)を製造・販売した米国の化学企業14社を相手に、ベトナム系フランス人女性チャン・トー・ガーさん(79歳)が起こしていた訴訟を却下した。
この訴訟は、自身がエージェント・オレンジの被害者であると主張するガーさんが、米国のダウ・ケミカル社(Dow Chemical)やモンサント社(Monsanto、現在はドイツのバイエル社(Bayer)が所有)など14社の化学企業を相手にしたもの。
ガーさんはウィリアム・ブルドン(William Bourdon)弁護士らの助力を受けて2009年5月、パリの良心の国際裁判所(International Tribunal of Conscience)でベトナムの枯葉剤被害者のために証言した。2013年にエブリー刑事法院に枯葉剤を製造した米企業26社を提訴し、2014年に19社に対する訴訟手続きが開始され、6年間の準備機関を経て今年1月に正式な裁判が始まった。
ガーさんは20代の頃にベトナムでジャーナリストや活動家として活躍していたが、エージェント・オレンジの被害により2型糖尿病やインスリンアレルギーなどの影響を受けていると語っている。ガーさんはロイター通信に対し、「訴訟は却下されたが、控訴する」と述べた。
企業は、米軍が自社の製品を使用したことに対して責任を負うことはできないと主張していた。一方、フランス通信社(AFP)によると裁判所は、米国政府の戦時中の行動に関わる訴訟を裁く権限を持たないと判断したという。
ガーさんの弁護士の1人であるブルドン氏はツイッター(Twitter)で、「裁判所は裁判権免除原則の時代遅れの定義を適用しており、国際法および国内法の近代的原則に反する」とコメントした。
これまでのところ、エージェント・オレンジをめぐる裁判で補償を勝ち取ったのは、米国をはじめとする戦争に関与した国の退役軍人のみ。2009年には、ベトナム枯葉剤被害者協会(ダイオキシン被害者協会)が米国の大手化学会社を相手に訴えを起こしたが、連邦控訴裁判所から棄却されている。
米国は、戦時中の散布と、多くのベトナム人が訴えているダイオキシン中毒との間には科学的に証明された関連性はないと主張している。