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ベトナム出身の禅僧で平和や人権運動家として広く知られるティク・ナット・ハン(ティック・ニャット・ハイン/Thich Nhat Hanh/釈一行)氏が10月26日、リハビリ療養の拠点としているタイのナコーンラーチャシーマー(Nakorn Ratchasima)から南中部沿岸地方ダナン市のダナン国際空港に降り立った。ハン氏は2017年半ばに9日間帰国しており、およそ1年ぶりの帰国となった。
空港では北中部地方トゥアティエン・フエ省フエ市のバオラム(Bao Lam)寺から禅僧ティク・ザック・クアン氏率いる代表団がハン氏を出迎えた。ハン氏がバオラム寺の僧侶らに宛てた手紙には「私はこの身が尽きるまでの日々を、トゥーヒエウ(Tu Hieu/慈考)寺の師や弟子が揃う地で過ごすためにベトナムへ帰国することを決意した」と記されている。
またハン氏は手紙で、「師に託された使命は70年間の活動を通して、その教えはトゥーヒエウ寺の継承者やベトナムの仏教徒、世界中へ広まった。命の輪が閉じつつある今、残る月日を師や弟子と共に過ごす時が訪れたと感じている」とも綴っている。
ハン氏の教えや同氏とのエピソードを書いた「Dinh xuat ky nhan」の著者で学者のグエン・ダック・スアン(Nguyen Dac Xuan)氏は、ハン氏の帰国についてこう語る。「ベトナム国民なら誰もが余生は故郷で迎えたいと思うのと同じようにハン氏も使命を終えた今、師や弟子の元へ帰りたいのです。ハン氏の願いはとてもシンプルです。大きなお堂もお墓もいらない、ただ火葬して故郷の血に撒いて欲しい、そう願っているのです」。
ハン氏は1926年にフエで生まれた。1942年にトゥーヒエウ寺で出家し禅僧となり、ベトナム戦争中には仏教指導者として人々の救済にあたった。 後に米国やフランスへ渡り、平和活動や瞑想指導に従事し、1967年にはノーベル平和賞の候補に挙げられた。
ハン氏は2014年の脳出血の後遺症で言葉を発することはできないものの、健康状態は良好で専属スタッフが身の回りの介助をしている。この後、ダナン市内の海岸沿いのホテルに滞在してからフエ市で静養するとされている。