
「今まで色々な仕事をしてきましたが、グラブの運転手の仕事が一番好きです。いつも忙しく街中を走り回り、路地の隅々まで知ることができ、毎日たくさんの運転手仲間と交流することができるので、外出しない日は何だか物足りない気持ちです。時々、配車の予約をしたお客さんのところへ迎えに行くと、お客さんが私を見て驚き、本当に私が運転手なのかと尋ねてくることがあります。私は『そうですよ。ナンバープレートも名前もアプリの通りです』と笑って答えるんです。乗車後にチップをくれる方や、電話番号を交換してくれる方もいますよ」とスオンさんは笑いながら語る。
![]() (C) tuoitre |
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グラブの運転手のチン・ゴック・ズンさん(男性)は、女性のスオンさんよりも男性の自分のほうが頼りなく感じることが多いと話す。「スオンさんは年配でしかも女性ですが、本当に元気なんです!彼女は1日の終わりにしかアプリをオフにしないので、我々はとてもじゃないですが彼女に追いつけません。いつでもどこでも街中で見かけますし、誰かが助けを求めればすぐに駆けつけてくれるんです」とズンさんは語る。
スオンさんはそのしっかりした性格と熱意から、運転手仲間たちにとってリーダー的存在となっている。病気やトラブル、支払い拒否や受け取り拒否などの問題が発生すると、運転手仲間たちはスオンさんを頼りにする。助けを求められれば、スオンさんは即座に解決策を講じ、周囲に協力を呼び掛ける。
グラブの運転手たちによると、スオンさんを中心に、長年かけて苦しみを分かち合いながら、仲間としてのコミュニティが築かれたのだという。そして、投票などはなかったが、満場一致でスオンさんがグループリーダーに選出された。
ダナン市ではオンラインショッピングの普及に伴い、配車アプリの運転手の数も急増し、2022年以降は配達中の事故やトラブルも続発している。
ダナン市にはグラブを含めて数千人もの配車アプリの運転手がいる中、リスクの高まりを感じたスオンさんは、ダナン市労働連盟を訪ね、運送業の運転手に特化した労働組合の設立手続きについて指導してもらった。
「私は国の機関で働いた経験があり、教育も十分に受け、様々な環境も経験してきたので、配車アプリの運転手に特化した労働組合があることは知っていました。ダナン市ではまだ新しいですが、大都市ではすでによく知られた存在です」とスオンさんは話す。
2024年7月10日、ダナン市労働連盟の主催により、ダナングラブ配車アプリ運転手労働組合の発足式が開催された。委員長に選ばれたのは他でもないスオンさんだ。式典でスオンさんはグラブのユニフォームを着てステージに上がった。ステージの下では、200人近い運転手仲間がその姿を見守っていた。